「家政婦募集容姿端麗、声に特徴のある女性歓迎」
貯金はもう少しで底をつく。最早迷う術がないのはよく分かっている。だからと言って、これだけの新聞広告に飛びつくやつが私以外にいるのだろうか。と思っ ....
鬼の島に住む鬼は
毎日生活を送っている
朝起きると少し不機嫌で
中には朝から元気な鬼もいるが
多くの鬼は低血圧で
みんな朝ごはんはほどほどにしか食べない
ある鬼は会社に出か ....
強く握り締めると壊れてしまって
口付けを交わそうとすると首の骨を折ってしまって
優しく愛撫しようとすると
皮膚がべりっとめくれてしまって
そんな風になったあなたを
私はきっと愛 ....
まるで横断歩道みたいにされたら
間違えて踏んじまうのも無理ないさ
いて、って声が聞こえなきゃ
あんただってすぐには分かりゃしないよ
鏡の中で色を合わせて
おんなじ姿をしてみるの ....
各時代には
それぞれペニスが生えていて
長いものや
固いものや
それはそれはいろいろな種類があるけれど
私は特にその中でも
品のいい形をしたものを選んで
自分にあてがった ....
僕の頭のおかしい友達が
僕と手をつなぎたいって言い出した
その手は何かべったりした物を触った後のように
ぬめぬめしていて
僕はすごく嫌だったけど
僕は彼と手をつないだ
鼻歌 ....
かもめ
そっちは寒いよ
南風が心地良くて
羽を使うのを忘れたかい
かもめ
寒いところは嫌いかい
行ったことないだけだろう
それなりにいいところさ
かもめ
お ....
あんた死人の臭いがするね
だけどそれほど悪くない
老婆は僕にそう言った
婆さん、きっとあんたと同じ臭いなんだよ
だからどこか安心する
老婆はしわくちゃの顔をもっとくちゃ ....
子どもを三人殺したと
自慢する男がいた
あたしゃ子どもを三人産んだよ
そういった小太りの女がいた
子どもを三人殺した男は
一人ずつどんな風に殺したのか
丁寧に説明してい ....
長い髪は黒く時折そのページにすがりつくように、さりげなく垂れる。少し邪魔そうに髪をかき上げながら、彼女はまた新しいページをめくる。
彼女は大きくて、少し茶色の混じった瞳をその一文字一文字に ....
手のひらくらいの石を拾って
頭に打ちつけた
何度目かの後
柔らかくなってきて
そこにすっぽり石を埋め込んだ
固くなったその部分を
指の固いところで叩くと
頭の中に
....
嗚呼、空だ
空だけが、ある
この視界を埋めるのは
ただ唯一の空だ
嗚呼、なんて重い
この一つの体で支えるには
なんて重い
体中が大地に縛り付けられて
気づかぬうちに ....
ふくれっ面のあなたの頬を
針で突き刺したら
プシューと間抜けな音を立てて
空気が漏れてきて
その風で台風を起こして
そこら中を吹き飛ばして
真っ平らになったから
とにかくい ....
ドクン、ドクン
私の中の心臓を取り出して
そっと耳をあてる
ドクン、ドクン
耳の奥に音は響く
私は感じる、
私の生を
私は知る、
私の命を
ドクン、ドクン ....
まだもう少し待って、とあなたに言うのですが
せっかちな人ですから
腕の切り口からはもう赤々とした血が
零れだしています
私は死装束をまだ縫い終わっていないので
すぐに追いかける ....
ある夜ふと私は眠り方を忘れてしまった
思い出そうと頭を振り絞ってみたけれど
それほど易しいものではないようだ
私の眠り方は私しか知らない
何日もすると
私は眠り方を忘れた自分に ....
あなたにもらった指輪が
指から抜けなくなりました
そう言うとあなたは
ドスンと私の指を切り落とし
そっと指輪を抜き取って
大事そうに血をぬぐいました
優しいあなたは
....
洗濯物が風に揺られて
乾きやすい季節になりました
洗う回数も増えてしまって
あなたの香りもすぐに消えてしまいます
四月の暖かさは
すべてを曖昧にしてしまうから
あなたと過ご ....
それは奇跡の季節
花や草が一斉に芽吹く
あちらこちらで聞こえる音は
寝起きの悪い生き物の声
毎年やってくるただの循環の季節なのに
何かが始まりそうな気がするよ
君を見つめる ....
一人ぼっち寂しそうね
そう言って目を細めた
こんなにもきれいな夕日だけど
太陽の本音を君は知っている
柔らかな暖かな
風が撫でる君の赤い頬
夕日を映した様に
それはとても可愛らしくて ....
たんぽぽが咲いてるよ
寒い冬を乗り越えて
黄色い花びらを
太陽に向けて
いっぱいに開いているよ
その姿は
なんだかとても勇ましくて
これからやって来る春を
両手広げ ....
みにくいアヒルの子生まれたよ
それはそれはみにくくて
誰とも似ていなくて
みっともなかったけど
みにくいアヒルの子
ママからも
兄弟からも
蔑まれ
疎まれた
....
柔らかい襞に隔離されたこの場所で
あなたの本音は大きく響く
時折波打つ羊水は
あなたの悲鳴に呼応している
あなたを愛したはずの男は
小さな自分の分身が犯した
罪が証明された ....
女の顔は美しく
女の顔は醜く
女の皮はつるつるし
女の皮はたるみ
女の年は若く
女の年は老い
それは女であり
それは女であり
いくつもの顔を持ち
刻まれる皺にか ....
ブルーのラズベリーを頬張って
青い汁を垂らす
それを見た老婆が
あんた青い血だ
人間じゃないのかいって
そう言ったんだ
あんたは言い返した
そうさ、俺は人間じゃねえ
....
初めてこの部屋に来る彼女は
僕の本棚を見て
どんな本を読むのだろうか、と
思うのだろうか
僕の机を見て
何に興味があるのか、と
思うのだろうか
壁に立て掛けているギ ....
盲目の老紳士が言う
君の声はママの声に似ている
私はそんな彼のために
毎日いろんな本を読み聞かせる
昔話
遠い国で起こった戦争のお話
時には絵画を細かく言葉で表現する
....
買ってもらった白い傘
とってもとっても大きな傘
いろんな雨が降り落ちる
青い涙のしょっぱい雨
赤い雨は水玉を作り
鉄の香りを漂わせる
傘とおそろいのワンピースにも ....
権力は好き?
僕はママの作るオムレツが一番好きだよ
そう、いい子ね
でもママが好きだって言うなら
僕もその権力を好きになるよ
そうね
権力っておいしい?
....
ぬるい香り
何かを思い出しそうで
その曖昧さに脳が少し離れそうになる
裸足にそっと伝うのは
こっそり夜中に会いに来た
春の温度
脳の裏側をゴシゴシしたら
すーっと剥 ....
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