「桜雫」
PULL.

平野屋さんの前通り、天神さんの脇抜けて。
通りの脇の、暗い神社の木のカーテン。
暗く沈んだ冥府道。
平野へ通じるこの道は、何処か向こうへ通じてる。

冥府道を通り抜け、大きな鳥居その出口。
赤い鳥居に見下ろされ、ぽうと照ってる女灯籠。
雨に濡れた石畳、濡れた足音ただ一組。

灯籠明かりに照らされて、浮かび上がるは濡れ桜。
しとどに光る雨粒は、あの日の女の涙粒。

誘わるるまま近づいて、請わるるまま横になる。
濡れた花弁が赤みを増して、甘い香りが囁くと。
桜の枝の竪琴が、しゃなりと雫を爪弾いた。

一雫の濡れ桜。
我も忘れて、飲み干した。
桜雫に我酔うて。
夢も忘れて、飲み干した。




「桜雫 - さくらしずく - 」
04/04/2004 【PULL.】
早朝。
20分、即興。


蛇足の補足。

京都弁風のイントネーションで読んで頂きますと、より一層効果が増します。



自由詩 「桜雫」 Copyright PULL. 2004-04-04 06:59:47
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