冷酷に。


ひどいことを書くとして、
例えばそれが、
その人物の日常であるならば、
それは割り切って、
冷酷に書かねばならない。

読んだ人が、
「この書き方ってひどすぎない？。
　これを書いたヤツは、
　もっとひどいヤツに違いない。
　きっと最低のゲス野郎だ！。」
そう感じるぐらい、
割り切って、
冷酷に書かねばならない。


語り口が驚きに満ちていれば、
それは非日常の出来事の描写だ。
その人物が、
はじめて殺人を犯したのなら、
それでもいい。
いや、
むしろその方がいい。

だがそうでなく、
日常であるのなら。
日常的に殺人を犯す習慣のある、
そんな人物であるのなら。
それはきみが、
スーパーで買った肉を捌いて料理するように、
書かねばならない。


冷酷と残酷は、
違う。
少なくとも書く上で、
それは違うことでことばだと、
おれは考えている。

それはとても残酷な、
ひどい考えだけど。












　　　　　　　　　　　了。


Sex And The Poetry.Vol.10,
「 冷酷を書く。 」