鳥たちのあざ笑うさえずり
何かの象徴のように
そこにいるしかない僕を笑う
鳥たちは羽ばたく
そしてまた明日には戻って来るだろう
いつまでもそこにいる僕を
また笑いに来るだろう ....
鍵盤を踊る細い指
憂鬱音
絶望音
情熱色の希望音
そして、一瞬の隙間に入り込む無音を
あなたは奏でる
その音にわたしは踊り
狂い、そして切なさに悶える
わたしは音に乗る ....
村の子どもは笑ってる
世界が進んでいることも知らずに
村の子どもは笑ってる
飯を食らい
惰眠をほおばり
野を駆け回り
そうして大人になるだけの
そんな日々を疑わない
....
キッチンの窓の向こう側から
太陽が大げさに光を射す
生まれた時から
寝たきりのお前
唯一お前の側にいる等身大の影も
最早その成長を止めた
ああ太陽はまぶしいな
ああ太陽 ....
黒が透き通る世界に
いろんな音が混ざりこむ
犬の寝息
もれる電子音
そして、一瞬しんと静まる
夜の音
星の瞬き音に呼び止められ
黒と混ざり合った空を見上げる
逆さに ....
使い古された男のそれのような
亀頭をそっと覗かせて
疑心暗鬼に世を憂う
お前が生きて最早万年
そろそろ敵も絶えた頃
お前の甲羅も外したらどうだ
重かろうに
窮屈だろうに
....
なんてこった
そんな何気ない顔でも
あんた
生きてるんだね
あんたが笑っても
泣いても
たとえ急に怒ったって
世界は痛くも痒くもない
分かりやすく言ってやろうか ....
君と初めて会うまでの間
君について一つの仮説を立ててみる
君は今日
僕と会ってから
死のうと思っているだろうと
君は急に僕に会おうと言って
けれど僕はなぜか以前から
君 ....
ねえ
あなた一度だって
私の名前を
呼んでくれなかった
ねえ
あなた一度だって
私の名前を
叫んでくれなかった
少し肌寒い夜に
あなたの中にくるまってると ....
私とあなたの名前はクローバー
たった一人の願いを叶えるために
生まれてきた
隣同士にいつもいるあなた
泣きたくなるくらいの
優しい気持ちになる
誰かの願いを叶えるために ....
黙って駆け出す君を見て
今日も嫌なことがあったんだろうと
僕は考える
今日の嫌なことはなんだろう
僕は思いを巡らす
上手く起きられなかった朝
黄身の固い目玉焼き
紅茶と間違っ ....
うるさい無音が舞う部屋で
あなたはピアノを奏でる
無音はあなたの音に慄き
我先にと部屋を抜け出す
その格好のままでいて
僕があなたの隣に行こうとすると
あなたは優しく
....
あの太陽を挑発するように
空に向かって主張する
大きな大きなくらげ雲
這い上がる排煙は
この世の隅々にまである希望を巻き込んで
絶望色に空を染める
その触手に刺された先に ....
凍りついた重たい大気に圧されて
密やかに凍えるお前を
私はそっと抱きしめる
けれどお前は
私に触れられた瞬間
はっとしたように
すうっと空気に溶け込み
私の指の間をすり抜け ....
じりじりじりじり照りつける
いつまでたっても照りつける
にらみ返せば目が痛む
じりじりじりじり照りつける
直視されない太陽は
いつだってひとりぼっち
世界中の人に愛されよう ....
ほらご覧坊や、あれが人間よ
はしたない行為に身を委ね
年がら年中鳴き声がうるさい
勝手な快楽で
勝手な繁殖を
やつらを喰う物が現れたら
食べる物には困らないわね
ねえマ ....
他にも女はたくさんいるが
女房は愛想を尽かして
子を連れて出ていったが
やはりおまえが一番で
おまえが他の男と口をきくだけで
やきもちを焼く姿を見て
情けない人ねと
お ....
宇宙が地球を影す頃
そろそろお家に帰らなきゃ
おいしそうな夕飯の匂い
あの子の家はカレーかな
いいないいな、おいしそう
僕の家はどんな匂いかな
好きな物が出るといいな
....
干支がちょうど二回りして
ああ、今年は当たり年やなあて思ってたときに
行ってもうたあんたのときとは違って
長生きした人の葬式は
ほんま呆れるくらい殺風景なもんやな
受付の人は寝 ....
春の花を見つける
忘れないように匂いを嗅ぐ
きっとこの花が
私を飾る
だから忘れないように
匂いを嗅ぐ
夏の果実をかじる
熟す時期を覚えておく
きっと私が最期に食す ....
早よ目が覚めて
あんたはまだ寝てて
多分まだ何時間かは起きへんやろから
わたしは冬と、朝を歩く
あんまり寒いから
記念に撮っとこうと思って
カメラ向けたけど
恥ずかしが ....
坊や、雪が降っているよ
桜はまだ、咲かないの
ご覧もう咲いているよ
真っ白な雪桜が
坊や、雪が降り続いているよ
椿はまだ、咲かないの
ご覧もう咲いているよ
みどりいろの ....
わたしは死んだ
あんたはさぞかし喜んでいるやろう
あんたは周りにいっぱい女の人こさえて
家にも帰って来うへんで
月に一回お金だけ落としていって
なんかの義務みたいにわたしを抱いて ....
朝の日常議論の花
そこに正義は生まれ
悪にくだを巻く
薄い紙に
描かれた人間模様
何処か遠い場所で起こっていることだろう
大きな声で騒いでみても
どうせ聞こえはしないの ....
パパは今朝の革命に失敗して
その日の夜から
帰って来なくなった
そして僕はパパのいない毎日を生きて
いつしかパパと同じ年になった
パパの遣り残した革命は
とてもちんけなもの ....
一夜の頃
初めてあなたと離れた夜
一人の夜は何か不思議で
夜の音を聞いている間に
過ぎてしまいました
二夜の頃
あなたがいないことに慣れてしまった夜
何をしていいか分か ....
おはようインソムニア
今日も聞かせておくれよ
僕等が眠っている間に存在した
続きの世界のことを
ねえインソムニア
君が目を閉じたとき
僕等の世界は
終わるんだろうね
....
【一女】
今昼の行い
良人の夢に
現れぬことを
ひたに願う
この行い
一瞬の産物なれど
世にもおそろしや快楽は
我の内をひた濡らす
嗚呼うつろな顔を見 ....
太陽が真上に輝くとき
私の影は死にました
影は本当の私でした
影が本当の私でした
私はいつも笑っています
笑っていれば許されます
影は時折泣いています
影は時に嘲笑います
....
なあダーリン
悲しいときもあるやろ
寂しいときもあるやろ
辛くて
訳分からんなって
死にたくなるときもあるやろう
けどな
あたしは止めるよ
あんたが死のうとして ....
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