「どんなことがあっても、絶対に知らない人を家に入れてはいけないよ。」
そう子ども達に言い聞かして、母親は出かけて行きました。
「分かってるよ、ママ。絶対に知らない人なんか入れないよ。」
子ども達 ....
「だめだぁ!できない!」
僕は書きかけの論文をくしゃくしゃっと丸めると、ぽいっとごみ箱へ放り投げた。
放り出されたごみはごみ箱の縁に当たり、近くに転げ落ちる。
もう既に周りはゴミの山と化していた ....
箸の間をゆどうふつるり逃げまわる
熱い湯に浸かりし豆腐のぼせ顔
昆布退け湯豆腐様が今主役
湯豆腐や生姜やネギで髪飾り
湯豆腐の白肌柔く歯をあてる
幾年の梅酢の瓶は琥珀色
....
ずり落ちてキラリと光る脇の汗
ホテルから覗くカップルオムツ替え
春はこない
いまのわたしは冷たい風と雪とが吹き荒ぶ冬
いつか読んだ物語のように
魔女がわたしのこころを冬にしてしまった
春はこない
夏も秋も
たとえ季節が移り変わったとしても
わたし ....
翼をむしり取られた鳥は
もう二度と真っ青な大空を自由に飛び回ることができない
かつて、自分自身がこよなく愛した空を
今は、涙をためた小さな瞳でなつかしそうに
かつ、憎しみを込めて眺めるだけ
....
母親には頭から罵声を浴びせかけられ
「お前なんか障害者じゃ」
同級生からはゴキブリのように扱われ
「シューーーー」
(殺虫剤をかける真似)
挙句には椅子の脚を支える硬い部品を頭に投げ ....
小さな赤い火が仄かに燃えている囲炉裏の暖かな炎よ
皆笑顔で囲む夕べ
画家の描く絵のように時は止まったよう
笑顔向ける家族の穏やかで優しい団欒
慎ましやかに流れる家族だけの時間
2024年4月5日に日本テレビ金曜ロードショーで新海誠監督作品の「すずめの戸締まり」が放送されることを知り、その日は1日の仕事終わりに座布団の上にのんびり座りながら観た。
ちなみに新海誠監督作品は初 ....
テレビに映るにこやかな笑顔
介護の大変さなど微塵も見せず
嬉しそうに成功した親の介護を語るゲスト
母と私はため息をついた
(介護ってそんなに生易しいものじゃない)
祖母を介護していた ....
さくら散り賀茂の水辺で浮かびたる
ながれながれてどこへいくやら
露ふくむ若葉横たえきみをまつ
我が身虚しさきみぞや知らむ
おだやかに流れる時を肌にうけ
加茂をみおろす桜の並木
....
柔肌を鞭で叩きて起こす御代
さくら笑ひかなしさ忘るるこのひととき
はるいろのはなびら舞いておどりたる
あおぞらにさくらの枝葉ひろげたり
瞳(め)に映る若葉薫りて胸騒ぎ
梅雨もよう読経混じりて響く音
....
詩は絵画である。
白いキャンバスの上に色とりどりの欲望を彩った芸術である。
この作品を見れば一目で、願望も希望も絶望も一際妖しげな光に満ち満ちている事に気付くはずだ。
彼らは普段息を凝らして、仮 ....
締め付けんばかりの痛みが頭のなかを奔り抜け
途切れ途切れに聞こえる
微かな君が代の旋律
振り払おうと顔をしかめ
やっと頭の外へと追い払う
痛みはさらに増して脳味噌ごと圧迫するようだ
い ....
僕は雪にくちづけをした
白い白い大地に降り積もる雪は
僕のキスで
紅く
紅く
染まる
君は知っているのだろうか?
ココロに秘めた想い
君への郷愁
僕は寒さに震え
冷たさ ....
田は朽ちて遥か遠くに去る声の
懐かしきかな小さきかはず
4年ほど前、「傾き者になりたい」と言っていた彼
その数ヶ月、後彼は舞台の上で赤い派手な着物を着て
見事、傾き者になってみせた
見る者を魅了させる
粋で艶やかな立ち姿
それから、月日は経ち ....
まるで儚い
これはまぼろし
どうしてなぜ微笑む
愛しいヒトよ
この指先ですら届かぬ想い
貴方に触れることすら叶わぬ
悲しみが胸の奥深くに突き抜け
やがて渇れ果てて砂漠となる
こ ....
翼は漆黒となり天を覆い隠さんばかり
羽ばたくごとに羽は舞い上がり
轟音とともに嵐が激しく巻き上がる
自然に削り取られた猛々しい崖は
空の猛者を見上げてこう言った
「これこそ勇猛果敢に ....
私は迷いびと
眩しい光に導かれてやってきた
翠の衣纏いし迷いびと
私の行く手はまだ分からず
闇は私の背後で待ち構える
哀しき永遠の迷いびと
月は翳り風が包む
馨る群雲は星を隠し闇を笑う
靡く焔を謳うのは刄を剥いた狼か
それとも草を食む子羊か
躍りながら狂う刻の輪舞
留まることを知らぬ幼児の残忍さを
宇宙はまだ知らない
論より証拠
苦労重ねて勝ち取った
頑張って頑張って掴み取った
辛さよりもかけがえのないもの
逃げも隠れもせず
実直に向き合い
夢を信じてひたすらに技磨き
運動神経の良さも生かしつつ
苦 ....
眠りから醒め羽を広げて飛び回る
乾涸びた茶色い羽で
複眼(め)はまだ虚ろで
ぼやけた視界が夢との境すら曖昧にする
そうだ柔らかい土と
蒼蒼とした葉叢に飛び込んだ夢
またボンヤリ ....
半分眠り込んだ脳ミソに
心地良く響くフランス語の歌詞
内容もなにもない
ただメロディーだけが頭の中を飛来する
その瞬間ふと脳裏に浮かぶのは
瞼の落ち窪んだ骸骨のような子どもなのだ
軽やかに繊維の浪の上を滑る
ぶウうぅんと唸りながら
僕が通ったあとはふんわりと浪が笑う
憂いを払い落としたように
さぁ、まとわりつくように
こびりついた君の埃を吸い取ってあげよう
初め ....
「ありがとう」
涙を瞳に滲ませながら何度も何度も
乾いた手で私の手を握った
病室の孤独なベッドの上で
「来るとは思わなかったから会えて本当に良かった」
ひととき虚ろな目が活気づき
感謝 ....
筋肉の隙間かい潜り蠢く泥鰌
強張る電柱に巻きつき
強烈すぎる電流一発
もう私の脚はあなたの言いなり
脳味噌も霞んで深い腐海に沈む
◯◯ちゃん!
切羽詰まった母の叫び声
揺さぶられ ....
今日というレーンを必死に走り
一晩休めばまた
明日というレーンをがむしゃらに走る
何のヘンテツもない日常
それが幸せなのか
それとも不幸せなのか
何も変わらない退屈を飼育箱のなかで ....
温かい土のなかで眠り続け
眩しい光に導かれて
初めて外の世界を知った
希望と期待を抱きながら
何も知らなかった私
たくさんの愛と夢が
私を守ってくれると信じていた
たくさんの裏切りと ....
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