ノート(外歌)/木立 悟
 



硝子と氷を踏みしめて
夜は土に息を吐く
解けては昇る渦の音
交わりをひとつ隠し持つ


なにもない洞
失くした名前
夜明けのままに
ちぎるうたごえ


うるむ目の先
曇になり
むらさきに降り
横たわる


聞こえるもの皆
やさしくつめたく
狂おしく正負の
願いに満ちて


歓びもなく
記憶もなく
呑みこむままに孕みゆく
たがいちがいの声の指たち


小さな針は降ることを止め
無数の無痛をくちづける
重さもなく 眠りもなく
あたたかさだけをつぶやいて


触れる間もなく遠去かり
こだまの色をまとうもの
ふくよかな罠 まだ見ぬかたち
わたしを揺るがし 放つうたごえ












   グループ"ノート"
   Point(4)