ノート(ふたつの指)/木立 悟
 



ひとりひとりを抱いて放して
そしてひとりも戻ってはこない
雨のなかの羽
ぬくもりとまぶしさ


ひたいの上の
羽の柱をまわしながら
空に立つ不確かで巨きな
ひとつの羽を見つめている


旧いひびきをすぎてゆくもの
水のかたちをひたはしり
いなびかりのなか忙しなく受粉し
あるいは滅び砕けながら
とどろきに咲く花を摘むもの


曇を曇にし
冬を冬にする粉の手が
冷たく指をひらくとき
手は水を含んだ手に変わり
みずからをただみずからを
滴のように触れてゆく


ふるえる手首を空に埋め
頬ずりのように洗うとき
指は一度石になり
そして
[次のページ]
   グループ"ノート"
   Point(6)