ノート(ふたつの指)/木立 悟
して羽へと変わってゆく
水を満たした舟のあとを
波と月は追ってゆく
岸辺の音に押されながら
舟は流れに流れを描き
流れの下に置いてゆく
羽を羽にほどきつづけ
無色に溺れる空洞を見る
石のままの指のひとつへ
粒の光は降りつもる
月のかたち 目のかたち
爪のかたち 火のかたち
舌のかたちをあなたに見せたら
あなたは見せてくれるでしょうか
あなたに満ちたあなたのかたちを
舟が海へむかうあいだも
舟のまわりは変わりつづける
舟に満ちた水の底には
眠ることのない指が居て
石と羽を繰り返しながら
静かに夜を見つめている
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