「 向こう、で。 」
PULL.







瞼の裏で、
魚が撥ねている。
なんの魚かは分からぬが、
確かに撥ねている。

目が合った。
すると魚の奴は、
ひときわ大きく撥ね、
瞼の水溜まりに消えた。

水溜まりは、
幾重にも波打ち、
波紋の環は、
瞼の向こうまで届いた。

だからわたしは、
あなたの目の前で、
瞼の向こうから、
涙を流しているのです。












           了。



自由詩 「 向こう、で。 」 Copyright PULL. 2006-07-25 15:51:41
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