「 流砂の朝。 」
PULL.







左腕に刺青がある。
16の冬に自分で入れた。
自傷って奴に夢中になっていた。
自分を傷つけて、
汚れた血を流したら、
綺麗になれる気がしていた。
穢れ腐ってゆく日々。
アルコールでも、ドラッグでもハイになれなかったのに。
ナイフを突き立てる。
その瞬間、突き抜けてハイになれた。
事が終われば。
穢れた気分に抱きしめられ、逃れられない。
なのに夜ごとナイフを突き立てた。
分裂した四つの生活の中で、
砂にナイフを突き立てる様に、一日に抗らいたかった。
流砂の日々。
誰も気づいてくれなかった。
誰も見つけてくれなかった。
我に孵った時、左腕には墨が入っていた。
またナイフを突き立てた。
なんどもなんども、
傷つけ肉を抉り、
皮を剥がし、
消そうと、
した。
消えなかった。
それから、
砂を泳ぎ逝きた果て。
成れ果てた左腕が笑っている。
流砂の朝。













自由詩 「 流砂の朝。 」 Copyright PULL. 2005-07-14 08:47:51
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