光のしっぽ
小川 葉

 
布団の中から
黄色い豆電球を
ぼんやりと見つめてるのが好きだった

とても無機質で物静かな
豆電球と向かい合って
顔のない人と対話してるような
自分の顔をを見つめているような
そんな感じが好きだった

なのに
いつからなのだろう
豆電球を消して
寝むることが習慣になっている

ふと豆電球が懐かしくなって
今夜は久しぶりに
電球をつけて眠ろうと思った
自分を見つめる時をまた
大切にしてみようと思った

大人になるということは
豆電球を消して
眠ることかもしれなかった

意識をうしなって
時を彷徨えば
ぴいひょろろ
と鳴く鳶の声で目覚めていた
生まれたばかりの朝を夢見て

人は眠るまでの間
豆電球の存在に
はじめて気づいて見つめてしまった
時がある

ある休日
消し忘れた豆電球が
昼になったと言うのに
負けずに光っていた

消さなければならない
いつかは
ふとそんな気がして
豆電球のしっぽを引いて
わたしはわたしの顔を
そっと隠した
 


自由詩 光のしっぽ Copyright 小川 葉 2009-03-05 03:16:11
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