車の聖堂 
服部 剛

アクセル踏みすぎちゃったり 
ブレーキ掛けすぎちゃったり 
右に左にハンドルを 
きりすぎちゃったり 


( 運転は「その人」があらわれます )  


誰もいない助手席から聞こえる、 
あの日の教官の声。 


( 運転は「禅の境地」です ) 


速度計の針は 四〇km をぴたり指す 


校内コースを走ったあの頃は 
肩を強張らせてハンドルを握った 
スピードも 
今はすろーもーしょんに見える 

助手席には今も 
姿の無い透明な教官が 
ドアに頬杖つきながら 
不器用な日々の走行を 
見守っている 


まだ若葉マークは外せなくとも 
我が愛車のしーんとした室内は 
今や自分だけの聖堂です 


あぁ遥か前方の曇天に 
親しくも片翼をつないで翔んでいる 
二羽の鳶の黒影が 








自由詩 車の聖堂  Copyright 服部 剛 2008-05-31 22:19:28
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