「 笑っていた。 」
PULL.







仕事以外で涙を流すことはない。
それは家族が死んでも、
恋人が死んでも、
変わらない。
もし泣こうとすれば、
笑いが、
出る。
腹の底から弾けるような、
からからとした笑いが、
止め処なく、
溢れ出る。

家族が死んだ時、
あたし、
笑っていた。
大人達が薄気味悪そうに見ている中で、
あたしひとり、
いつまでも笑っていた。
どうして笑っているのか解らなくて、
なのに誰も教えてくれなくて、
ひとり悲しくて寂しくて、
泣きたくって、
でも泣けなくって、
あたしは笑っていて、
笑っていた。

あたしは笑って、
死を、
知った。
だけどまだ、
何も知らなかった。

あたしは何も知らず、
あたしは泣き屋だった。












           了。



自由詩 「 笑っていた。 」 Copyright PULL. 2007-08-06 18:34:35
notebook Home 戻る  過去 未来