それだけ
松本 涼
風の言葉は聴かない
大きな波間に揺られてしまうから
静かに耳を閉じて
心の水底を漂うだけ
哀しみの理由は知らない
日々を馴染ませる湿度のようなものだから
低空で胸を開いて
攫われるだけ攫われてみせるだけ
夢の続きは追わない
この身の呼び名を忘れてしまうから
回転を続ける地表に触れて
まだ此処に在るもの達を吸い込むだけ
君の想いは分からない
後ろに伸びる影を探すようなものだから
愛しさという灯りに向いて
私はただひたすらにとぼとぼと
歩くだけ
自由詩
それだけ
Copyright
松本 涼
2007-07-23 20:28:10
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