「 午後は雨。 」
PULL.







午後からは雨なので、
傘を持っては出掛けなかった。
昼食の蕎麦屋から出ると、
案の定、
雨が降り出した。

色取り取りの傘が、
街に花開く。
わたしは蔓を伸ばし、
近くの木に絡み付いた。
葉を大きく広げ、
雨を飲む。
雨は渇いたわたしを潤し、
わたしはゆるく、
生長する。
下を向くと、
傘を忘れた人間が、
わたしの下で雨宿りをしている。

「雨ですね。」
と、
声を掛ける。
「ええ雨ですね。」
と、
人間は答えた。

下の蔓で人間を捕獲した。
人間はやわらかく抵抗したが、
やがて停止し、
動かなくなった。

雨が、
きつく降り出した。
止む頃には跡形もなく、
わたしの餌は、
溶けている。












           了。



自由詩 「 午後は雨。 」 Copyright PULL. 2007-06-13 12:56:43
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