夢詠詩
松本 卓也

まどろみの中で
自由に走らせたペンが
どんな言葉を生んだのか

引き戻された現実には
何一つ確かなものは無く
書き上げたその時
心から染み出た安らぎは
今は思い出す事もない

きっとこの先書けやしない
生れ落ちることなく消え去った
言霊を追いかけたところで
ただ空しいだけだって

同じような事
似たような人
何度か積み重ねてきた

夢に生まれ夢に消えた轍
夢の中だけの温もりも
夢の中だけの安らぎも
全ては現実の前では
情けない空想での自慰だ

心に引っかかる言葉のもつ意味
いつに無く空虚な夜の重みが
首の後ろ耳の裏から痛みを引き出す

枯れ果てた記憶の集合が生んだ迷い
夢の詩が描いた本音とは何なのか

分らないから
分らないままだから

暫くは振り切る前の想い出のように
沈殿した淀みの中で蠢くのだ
それが最高の詩である幻想と共に
覚醒した己が生み出せない事実と共に


自由詩 夢詠詩 Copyright 松本 卓也 2007-01-28 22:30:39
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