*
それなりの道具を使い
ぐっすりと眠るだけの
疲れがあった
遠き日の村境
名もないわたしたちの
リアカー
人と生業があり
忍び泣く声も聞こえず
野辺や軒先は
ゆっくり ....
* まご
孫という字は
花に似ている
近くで見れば
込み入っているのだが
遠視眼で見れば
花に違いないのだ
わたしは間違っていた
孫を見ていれば
それがわかる
虫けらもあり ....
立春に咲いた室内のハイビスカスを
一日限りの花と知れば
賞賛が足りなかったようだ
どう慰めたらよかったのか
写真にも撮らずに
亜熱帯のハイビスカスが
真冬に咲く変動としても
その常緑 ....
水面を自在に動き回っていた
水すましはどこへ行ったのだろう
少年の高慢や恥辱など
とっくに澄んでしまっている
池に沈むしがらみは
百舌や川蝉のように
とび越えねばならぬものだった
....
手拭いでメダカを掬う
たちまち抜け落ちる
水のいのち
幻をおおきく育てていくには
名をとどめ
コトバをかけて
再び流れに放てばいい
明滅する蛍を追って
とうとう露草とともに
黄緑 ....
名もないような
草花があるのだろうか
たとえ雑草にしても
知らなかっただけなのに
心にとまったなら必ず
名を呼ばねばならない
気にとまった草花の名を
知らなければそれ ....
ーーー高橋雅人のコンサートによせてーーー
その音は数千年の嘆き
応えるもののない荒野で
干しあげた声
その音は数千年の別れを
吹きぬけてきた風の色
鈍色のアジアの白玉 ....
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