幻影に怯え現実に目をつむる
そんな大人になってしまいました
あたしは{ルビ二十歳=はたち}を過ぎたモラトリアム

あんなに幸せを感じた日々もあったのに
持続できないあたしは罪人のよう ....
公衆浴場のぼんやり広がる湯気の中
いろんな裸がごろごろしている
あたしだって そう
ひとつの肉の塊に過ぎない
すべる足元にご注意を――――
それにしてもここの照明は明るすぎます
 ....
わたしはちっとも朽ちない
咲いているあの赤い花のように
なぜわたしはいつまでたっても
朽ちていかないのだろう

食パンに生えたカビをまとっても
古くなるだけ
わたしは朽ちない ....
沈んでいた言葉がいま、動き出す
オート構築されてゆく
この手でつくりあげた方程式も
組み替えられていく無情
あたしは頭を抱えているだけ

記憶はつくられた意識の中
あたしらの足 ....
飽和した悲しみが、
 雨となって降り注ぐ


  それは涙/心のかけら
  誰も犯すことのできない領域


湿った土から
 悲しみを吸いあげて、
  よろこびを咲かす  ....
僕らは約束をかわしていた

生まれてから今日まで一人で生きてきたつもりになって
世界なんてクソ喰らえって
地面に唾を吐いたりして
反抗心を燃やすことばかりに夢中になって
大切なも ....
砂埃をかぶって
眠っていたはずの感情
ピタリと閉めたはずの蓋
カタカタと震えだす
振動で落ちた
蓋の中身が
目覚める

置き去りにしたはずの
悲しみが
鮮明によみ ....
胸が つんと 詰まる
まるで涙をこらえているみたいに つんと
こぼれそうなこの思いは なんだろう

真っ白いシーツ 物干し竿でなびいている
舞い上がる 太陽を包みこむように
ひる ....
レトロな花柄ワンピースに
包まれたあたしが踊るのは
腹黒のワルツ

赤いハイヒール三拍子に乗っかって
追い詰められていく
逃げ場のないダンスフロア
遮るものは何もないのに
 ....
  死ぬのが怖いなんて錯覚だ
  誰かに死なれることの方が
  よっぽど怖いじゃない

ブランコに腰をおろした
背もたれのない背によりかかり
ブランコはあたしごとひっくり返る
 ....
青空から真っ白い
雪が落ちてくる
所在なきものたちが
幸福を連れて
地上にやってきた

見えないところで定着
成長する細胞のはじまり
子宮でお遊戯会が催される
喘ぎ声 ....
 一

退屈と虚無が蓄積された日々
人生という大それた響きが
重くのしかかるから
あたしはかしいでいく

日々が圧縮されて
密度を濃くして体積を狭めていく
その重みは保っ ....
僕らはぐるぐる 考えるばかり

同じところを廻りつづけてる


それはまるで メリーゴーランド


規則的に上下する木馬のように

どこへも行けない
淡い甘い夢を、黒猫が食べました。
消化しきれなかった夢が黒猫の胃袋で肥大します。
限界で弾けた夢があたしの枕元を散らかします。
朝方、浅い眠りの中であたしは夢を見ます。
それはやはり淡 ....
髪を撫でた
わたしはあなたを支配する
やさしさを武器にねじ伏せる

ひとたび体を差し出して
されるがままにされてしまえば
ほんの少しの自由が得られる
けれども
代償を払い続けるのに
 ....
遊び明かした夜も終わり
よそよそしい朝の光が
地上を照らしている
空気はまだひんやりと
あたしの火照った心を冷ましていく
刹那、
解散という空虚が胸をよぎる
そんな夜明けを嘆いた

 ....
ねえ ドクター、聞いてほしいの
あたしの悩みはひとつじゃない
たくさんあるから どこかつらいの

ハロー ドクター、聞いてほしいの
あたしの心の一番近くにいる友達が
遠くへ行って ....
{引用=
無意味に
ただ流れる涙に
その意図を知りたくて
それは無意味で、
わたしはゆれる
ゆれているんだ
}
だって、あなたはスーパースター
闇に攫われた少女を助けて ....
水深五千メートルの深海
あたしの心は沈んだまま
光の届かないそこを
闊歩する。

太陽光の届かないそこでは
光合成を
できなくなった植物が
みどり色するのを
やめた。  ....
{引用=
吐き出したい、吐き出したい。
不安を全部、吐き出したい。
のに、あたしには口がない。
}
この口は、よく動く。
ほらね、
上下の唇が、くっついたり離れたりとせわしない。
よそ ....
人間の骨と魚の骨
灰にして混ぜ合わせれば
人魚の遺灰
海に{ルビ孵=かえ}そう
水面の粒子が
人魚を産むよ

歪んだ愛情
バクテリアが分解してく
中で、
幾日分もの雨や風に晒されて ....
騒ぐ鼓動が駄目だと叫んでも
はぐれた心 繋ぎとめておきたくて
涙を流してすがりついた
醜いその姿をはずかしむより
失うことを怖れて
私は空に手を伸ばす

掴んだ手の内が空っぽ ....
あふれる涙
こぼれないように
空を見上げたはずなのに
見上げた拍子に

 ぽろ ぽろ

両目から一粒ずつ
無色の涙は
夕日の朱色に染まって
こぼれた

目深にかぶった帽子
さ ....
煙と汗まみれ
熱気が生んだ水蒸気で曇る
リズムに狂ったあの日の夜が
恋しくて恋しくて、愛しくなる

{ルビ空蝉=うつせみ}にとり憑いた亡霊のパフォーマンス
怪しげな手の動き
不吉なダンス ....
ある真昼、
水色の雨が降ってきた
空は色を失くして灰色だった

色のついた雨はあたしに降り注ぎ
あたしの心の
色のない部分を染めていく

孤独は色を持たない
だから染まる
穴ぼこを ....
あたしの

この強い想い

言葉にして君に投げても

言葉は君の

心をすりぬけるから

あたしの想いはいつまでたっても届かない

ああ、どうして

うわごとは君の心に染み ....
愛してない 愛してない
これっぽっちも愛してない
やさしく触れてこようとするその手が憎いの
「かわいいね」
と、言いながら
あたしを愛でるその行為
あたしの知らない快楽で
あたしの知らな ....
それは絶望の暗闇で光を放つ球体
哀しみで覆われたその隙間
微かにこぼれるまぶしい線を
希望と名づけた楽天家
平和を願って永遠に
眠る寸前の出来事か

ほくろとえくぼを添えた笑み
懐かし ....
ちょろちょろ動く舌の先
煩わしいその動き
果物ナイフでスライス!

傷つけるつもりで放ったナイフ
すり抜けて消滅
私がいてもいなくても
あなたに幸せ訪れる
それでもいいの
偽善の道化 ....
鼻唄で世界を救えたら
僕ら
憎みあうことなんて覚えなかった
争い事が苦手な僕らは憎むことにしたんだ

心の中だけで繰り広げられる戦争に
僅か
疑問を感じ始めた僕ら
ふと耳を
ふと鼓膜 ....
百瀬朝子(85)
タイトル カテゴリ Point 日付
二十歳を過ぎたモラトリアム自由詩7*09/7/7 20:46
パブリック・バス自由詩7*09/6/22 21:52
不朽の私自由詩9*09/6/16 11:26
、何度でも自由詩5*09/6/14 19:05
アジサイ自由詩3*09/6/8 11:41
世界とゆびきり自由詩5*09/5/30 20:48
覚醒自由詩2*09/5/29 11:26
しめったシーツ自由詩4*09/5/15 20:53
Dance自由詩2*09/5/1 22:01
Night自由詩10*09/4/24 11:40
空虚を越えて自由詩8*09/4/16 17:59
Days自由詩6*09/4/14 21:57
メリーゴーランド自由詩1*09/4/9 17:15
淡い甘い夢の行方自由詩2*09/4/7 12:46
計算的な衝動自由詩4*09/3/29 22:49
朝帰り自由詩7*09/3/21 16:22
オー・マイ・ドクター自由詩2*09/3/13 21:51
だって、あなたはスーパースター自由詩2*09/3/9 16:46
深海闊歩自由詩6*09/2/25 21:34
口がない。自由詩5*09/2/23 17:44
骨/ボーンズ・リターン自由詩1*09/2/16 22:49
空に伸ばした手は水面を破り、自由詩2*09/2/15 17:06
涙の夕立自由詩3*09/2/6 11:52
亡霊と空蝉自由詩0*09/2/5 21:45
水色の雨自由詩2*09/1/26 18:34
すりぬける自由詩2*09/1/22 11:08
これっぽっちも愛してない自由詩4*09/1/19 22:20
こぼれる光に自由詩1*09/1/17 14:25
偽善の道化の願い事自由詩0*09/1/16 12:02
鼻唄で世界を救えたら自由詩3*09/1/8 18:02

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