鋭く澄んだピアノの音色を聴くとき
私の瞼には冷え切ったガラスが映っています

その切っ先にふれることで
乾いて荒れた指先から
一筋のか細いぬくもりが伝うので

わたしはもっと

もっ ....
月にこんにちはを
太陽にこんばんはを
はじめて聞かせてあげられるような
そういうことを優しさと名付けたい
きっとそのなかであれば
私は誰よりも優しくなれると思うから
夜の尻尾
寝静まった公園を歩く
親知らずの街灯が目を突いて
星のインクがかすれて

孤独な湖の砂のように
清らかでないものは沈んで
私もそろそろ沈んで
もうたくさんだといって

朝 ....
車に轢かれた猫がいた
アパートの階段を下りてすぐ
寝転んでいるそいつと目が合った


 おまえ、おれがくたばるまで
 カラスがつつかないように見ていてくれないか

うそ
 にゃあ
 ....
森色の波がプールの上を泳いでいる
白っぽいひかりを辺りに散らしながら
沈澱した生命を揺らしている

四角く溜まった小さな地球
夏になったら流されるよ

そこに箱船はないけれど
春がきた ....
今朝、彼女の感傷が洗面台に溜まっていた
それは明らかに濃く濁っていて
底が見えないどころか
何色かもわからなかった
彼女がどこにそんなものを溜め込んでいたのか
考える気も起こらなかった

 ....
幼い北風よ

どうして生まれてしまったのだ

幾千の肌を食いちぎって

いったいどこへ行ける

人々は固く戸を閉ざし

おまえはぼろぼろになってまで

何故、にぎやかな街並みに ....
洗濯機が回っていた
まだ白い朝のランドリー
 
太陽と月みたいにぐるぐると
薄いTシャツをすりつぶしていた
 
僕もその真ん中に飛び込んで
泳ぎ切ってみせたいと思った
 
しかし僕は ....
ガスバーナーみたいな空が
起き抜けの太陽に点火したら

ぼくらの一日はまた
こんがりと色付いていく
七氏(9)
タイトル カテゴリ Point 日付
冬に聴くピアノ自由詩010/12/18 21:38
優しさ自由詩010/9/29 1:50
深夜徘徊自由詩110/9/10 2:30
野良猫自由詩110/6/9 1:05
春のプール自由詩210/6/6 16:07
感傷自由詩010/6/4 1:04
北風自由詩009/11/2 22:36
渦の中の洗濯物自由詩109/4/3 0:46
自由詩008/10/30 22:22

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