見上げれば
鳥が
春を連れて来るところ
小さな鳥も
大きな鳥も
次の季節へと
渡っていく
傷ついた鳥が
冬の終わりから飛び立つと
ようやく空は
一面の春
鰐君
君は
すれっからしのように唄っては
ひとり
夜の片隅で泣いてる
沼地の夜は
命を
育んで
君の仲間は身を寄せ合っている
闇の底で
嗚咽が響く
鰐君
君ひとり
人 ....
ひんやりとした
廊下に座って
歯を磨く
いつもの位置で
視線を
下ろす
口の中を
泡まみれにして
訪れる無心
闇の中に
浮かぶ声
今日
わたしの刃は
誰にも
向け ....
一月一七日が近づくと 朝靄の中 仮設住宅の立ち
並ぶ 通学路を抜けて 初めて学校へ行った日を思
い出す 眠る街は 雪を待つ すれ違うこともでき
ず 呼び止められて 思わず受け取ってしまった 優
....
ひとりの
少女が
荒れた
広場で
待っている
午後の光は
小さな花の
髪飾りに
舞い降りて
空の青さを
気づかせる
少女の体を
縛っているものは
何もない
翼を広げ ....
母なりし君
小さな花産み
長い髪揺らして
いくつの波越えたかしら
幼子 言葉ひとつ とつ とつ 覚えてゆくたびに
通学路でぽつり唄ったメロディ
夜{ルビ来る=きたる ....
見上げる瞳には
鉛色の空
閉園を告げるメロディが
流れ出す頃
キリン舎は空っぽのまま
僕ら いつのまにか 大人になって
優しい瞳を 置いてきた
キリン舎では
母と子が
桃色の ....
老人たちの寝息が 午後を 静かに揺らす 時折
声にならない声が 響いてくる 痩せた腕で
眠らない彼女は 本を 差し出す
名前を呼んで
私の名前
忘れえないでいるものを
彼女の眼 ....
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