小さい音で音楽を流す 
雨の日だからね
素焼きの鉢に水がしみこむ
ひび割れに満ちてゆく水分
カッシーニの空隙を埋める流動体
あっ、と振りかえる
広尾でなくしたんだ 
水玉模様の傘
背中 ....
六月のうちに、
してしまわなければならないことがあった。
思い出そうとして思い出せないまま、今、雨を見ている。

  湿気が増して空気が濃くなると
  呼吸しにくくなるからね
  だけどそ ....
{ルビ掬=すく}い取れぬもの
沸きたち噴きだす火口に押しこめようと
小さな突起ごとわしづかみに{ルビ掴=つか}んでは
肥大してゆくこころ
そっくりそのまま、ひとのところへ返そうとする

無 ....
水が 
ぬるくなってしまう前に
しなければいけないことがあった

天頂から地平にかかる天蓋の
弧の延長線のところには 辿りつけないまま
目蓋の裏のカーブばかりを見ている

自分が 足り ....
もどる必要のなくなった ページの裏に 
目が覚めているときには見えなかった 指が めくる 
なぞるもののほうへ 卑怯なペン先が刺す 

揺れない手の真下で

けっして 動かないのだと云って ....
{ルビ荒=すさ}ぶりの手のひらを返して
寝息の間に
水を汲みにいく

逃げ出さない太陽のしるしと
ガラス窓の四辺に溶けこむコールサックの黒煙を
一枚ずつめくりあげる

この程度の渇き ....
記憶は山裾を落ちる雪に巻き込まれながら 
つるつると滑ってゆくのでした
雪の襞にしょぼくれた顔が見え隠れするたびに 
胸のひとところが痛むのですが
折りたたまれた日光のまぶしさに
真昼の星の ....
皮を剥きながら 
話しかけることの虚しさに気をとられて
滑ったナイフの 
切っ先のその先からながれでた 
一筋の金属のさまは
川を流れいく繊維の 
けっして移ろわない影のように
ただ 
 ....
鹿の眼の半球は
酸素と水の被膜の下で
微動だにしないで
こちらを向いていた


つややかな悔悟の眼差しは
きっと
通り一遍のあいそなのだろう


表も裏も同じものなのに
 ....
口を開いたとき、息より先に飛び出した単語が
のどにつかえてむせてしまった
日曜日だから、日はふだんより多くてもいいのに、光が少ない  
西高東低でもないのに

仮設テントで、電気の回路を直列 ....
雲のかたちがはっきりしてくるのは、まちがっ
ていることにいきどおっている、そのあらわれ
なのだと、すっと、受けとれる気がする。わた
しのぎざぎざのところにひっかかっている朽ち
かけた木っ端だの ....
もえる火の中でインクの文字が黒く浮きでたと思うや、寸時ののち、
ひときわ赤くかがやいた。一瞬、炎がわたしの心臓を、わしづかみ
にしようと触手をのばしたけれど、ここまでは届かなくて、わずか
に頬の ....
鍋の中で ふつふつと火山活動している  あんこ 
餡火山弾 や餡火山礫 が噴出し 
ひだり手の甲に 
ぽとり、着地 
あとで、ひりり

星と星が  衝突するより低い確率なんて 
そう ....
言葉のひとつ
近づいてきたら  追いやって
離れそうになれば 手繰り寄せている
縁側でする遊びのようで 意味なんてないのだけれど

笑顔の会話を 遠くにききながら
追い払われたひとの行方を ....
受容のその一言を得るがため 苦渋の部屋の
戸を開き 語意の裏の裏を読むに勤しむ 部
屋とは即ち余地に他ならぬのか 心を配ると
は誰の安息のためか 心を働かすとは 何の
ための機知なのか 「見え ....
よし、いくぞと手のひらを結んで、云ったはなから
溶けてゆく落胆の月光。饒舌な千条の筋が、微星の
囁きをかき消してしまうので、空はたちまちのうち
に白く濁った。空気の粒を水の粒に変えて、孕みな
 ....
そのスーパーのレジでは
いつも同じ人のレーンに並んでしまう
威勢のよいレジの人の前に立つと 急かされているような 
責められているような気になるのだが
そのひとは一度も 私を責めたこと ....
時間が解決する
時間が解決する
時間が解決する
どきどきしない
うろたえない
思いを外に向けない
勘ぐらない

もう少しの辛抱だ
できる
やれる

忘れられ ....
このまま眠ったら気持ちがいいだろうなという気持ちのままで眠ってしまったらしい。
気持ちがいいだろうなという気持ちのまま、は一字一句紛うことなくその通りで、
文字の羅列は保存されずに まま のところ ....
あなたのところから お月さまが見えますか

お月さまと 木星と アンタレスで
一辺が5度ほどの 正三角形を つくっています

(ほんとうの once in a blue moon は、
  ....
影がよぎった(気がした)
人間の背中らしきものが
ナトリウム光に立ちのぼる(あの人かもしれない)
もっとよく見えるように
闇に不透明な絵の具を流し込み
脳髄から松果体へと信号を送る(私の器官 ....
ふつふつと醗酵を始める嫉妬の萌芽は
決して所在など確かめぬまま
春の夜風に放り捨てればいいのだ

分かっていても
握りしめた手のひらはこわばったまま
開かない
体温のある限り{ル ....
子ども電話相談室で
かめさんは なにをたべるのですか
と訊かれた おねいさんが
かめをかみと聞き間違えて 
とたんに 形而上学的哲学的になってしまった
疑問符を 回答の先生に たら ....
clef(23)
タイトル カテゴリ Point 日付
土星に降る雨自由詩108/7/16 17:05
雨飼い自由詩3*08/7/15 0:06
抛(ほう)自由詩2*08/7/9 12:55
古い皮質のところの日記自由詩3*08/5/30 21:13
ひめくる自由詩0*08/3/14 14:11
融けるものなど、ない自由詩1*08/2/27 14:24
その向こうへ自由詩0*08/2/18 11:48
刻印自由詩1*08/2/10 16:47
きのうの、鹿自由詩2*08/2/8 18:53
アンダースコアを埋めていく気持ちで自由詩2*08/2/4 8:46
はなから、悔い自由詩1*08/2/2 11:51
恋歌自由詩4*08/1/27 9:16
年越し自由詩1*08/1/16 11:08
水辺自由詩6*08/1/10 10:50
焦れる未詩・独白1*07/10/19 11:08
未詩・独白0*07/9/26 1:50
微笑みの価格未詩・独白4*07/6/13 0:17
やれる未詩・独白1*07/6/6 2:18
悔悟未詩・独白1*07/6/5 4:20
blue moon未詩・独白4*07/6/1 23:57
未明の人影未詩・独白1*07/5/30 3:14
大抵の芽は潰しますが未詩・独白4*07/5/29 6:34
かみさん未詩・独白9*07/5/29 2:55

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