雨の午前の小さな部屋で
バッハを何回も繰り返し聴く
嬉しくもなく悲しくもなく
からっぽの心がチェロの音律を飲み干していく
さあてね
行かなくちゃね
誰にも会わなくてもいい時間と ....
ささくれた指で優しく音楽を奏でることはできない
掻き揚げた髪が汚れていたら誰も振り向かない
どこかで汽笛が鳴っているじいちゃんの昔の思い出
湖が七色なら魚は棲んでいない
今日も ....
緑色の石の夢は
古代へと続く
羊歯を分けて踏み出せば
緑色の湖がある
裸の男が水を浴びている
男が白い歯を見せる
この道を行くと俺の洞窟がある
家族が待っている
おまえは帰れと言う
....
あのね
今日はもう何も言わない
けどね
明日はたくさんおしゃべりしよう
そんな風に頭さんが考えているなら、ごめん
ごめんしてください
もう何も言わないで欲しいんです
笑ってい ....
お願い どこかへ行きたいの
私の地平線を
越えたどこかへ
お願い どこかへ行きたいの
このDNAでは
行き着けないどこかへ
かみさま
まるで違った世界を想像する
もだえなが ....
明日私は咲きます
満開に
そして明日の晩に嵐
私は散る 散ります
一枚の花びらも残らず
一枚の書置きも残さず
怒りが私を咲かせます
涙が枯れたらこの幹も切り倒して欲しい
ぬくもりの ....
地獄が怖いよう、お母さん
地獄が怖いよう、お父さん
クモの糸を手繰り寄せ
優しい繭を作る
おまえたちを守ってみせるから
必ず守るからと誓いながら
両親は老いてしまった
がっくりと肩を ....
青春てつまり絶望だよね
よく乗り越えてきたと思う
みんなニーチェやゴッホになる
そんな苦しみが凡人になんになる
五合目あたりで
ちょっと手首を切ってみて
血の赤さで目が覚める
おかあ ....
軽はずみを削除したつもりが
クリックが利かない
頭の中で消去消去
現実が痛打をくれる
目を覚ませ
目覚めの歌よ 柔らかな山々に響け
芽吹こうとする季節にこだませよ
もう一度今一度何度 ....
ほら、星が
またたいた オレンジ ブルー
流れた
星くずの尾が消えて
夜空はゆっくり どんどん回って行く
そんなドラマをすっかり忘れて
ちんまり機械の映像を眺め
天気予報を見て
星 ....
やってはいけない
だから
やってはいけない
だからこそ
やってしまった
だからいま
無言で
あなたのことを見ないでいる
あなたには語らない
あなたには知られたくない
わたし ....
風のない穏やかな夜に
小さなふいご
すーすー すーすー
風呂上りに小さな爪を切って
たくさんお話したね
おまえはわたしの布団に入り
お気に入りの枕を持って入り
もう眠りに落ちていく
小 ....
そんなに空が青いので
レンギョウ コブシ 響く歌声
ここに春がある
風が柔らかにわたしを包む
暗い目を伏せて
幼い娘
体を堅くして涙ぐむ
だってまだ知らないもの
自分を信じること
....
見えたあれが海
開ける青い空
飛んでいった帽子
母が呼んだ弟とわたし
乾いた松林を抜けて
見えたあれが海
白いたてがみは波頭
幾千の貝が呼吸をしている
幾千の魚が影を滑らし
海の誕生 ....
ガラス瓶に傾いた菜の花があり
「一面の菜の花」が浮かぶ
どこまでも歩けた
ちっぽけなわたし
宝物の本を抱いて
菜の花の田んぼの小道が変わらないと
永遠に変わらないと
もう思わない
どこ ....
こんなに悲しい こんなに苦しい
外は木枯らし吹き
暗いまなざしで街を歩けば
コートの襟に雨が入る
「雨に歌えば」若いころ観た映画
失敗したなぁ
そう、中年期は不幸な幸福
食べるに困りはし ....
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