外は雨が降っているね
上から下に向って
ビルの窓をぬらして夜景を沈める
あなたは喉仏を上下させて
私の胸の膨らみに
舌であぐらをかいている
生理前の微熱に足をからめて抱きつけば
下か ....
渇いた口から取り出す体温計は砂臭い
剥げかかったマニキュア
むわっと立ち込める暑さの中で
激しく咳き込んで 頭痛をこらえていた
今日の私はやりたい事がたくさんあったのだ
昨夜着替えたパジ ....
いっこうにかまわないよ
赤唐辛子まるごとでも
肉厚のにんにくひとかけ
適当に刻んで
汗ばんだ体温で茹でるスパゲッティ
沸騰する茹汁の泡々
鍋に浮かぶひとかたまりの雲に
見入ってしまう
....
猫がまどろんでいる
暑い日差しがつくる木陰の下
遠くで遊ぶ子供達の声に
耳だけぴくぴくさせている
暑い日の午後は猫につきあうのも悪くない
つながれることもなく
餌を貰うときだけ媚びる自 ....
もう少し眠りたい
膝をそろえて寝返りをうてば
天井と床がひそかにまわる
こんなふうに足を縛って
畳の上で自殺した女がいる
死後の恥じらい
さんざん泣いた後だから
寝苦しさに身を ....
― お持ち歩きの時間はどのくらいですか?―
― そうね 20分くらい ―
店員は片方だけ手袋をはめて
おもむろに小さなドライアイスのかけらを一つ取り出した
もやもやと息を吐くような白い煙
....
にんじんの悲しみは ピュ―ラーで一枚剥けばはがされる
じゃが芋の苦しみは 包丁のかどで丹念に取り除く
芯が残らないように
これは ソラニンっていう猛毒なんだって
玉葱の恨みは じ ....
今日は月曜日
私 今週から恋をするって決めたから
だから とびきりのイイ女になろう
真っ白のワンピースは
ウェディングドレスにも負けない戦闘服
幸せになる香り ベビードール
パールホ ....
雨あがりの朝 久しぶりに生活を離れて美容院へ行くと 白い布を纏い私はてるてるぼうずになった
若い男に首を委ね お湯加減はいかがと聞かれて大丈夫ですと答える
洗われてゆく髪・・・シャンプーも香りが選 ....
次の人生で
もし生まれ変われるとしたなら
風がいい
誰にも束縛されずに
素直な気持ちに赴くままの
風がいい
どこまでも続く空を辿って
色々な国を渡り
いつも何かを求めていられる ....
あなたとのキスにがっちりはまってしまって
どうして出会いのめぐり合わせは時々こんな風に私を脅かすのだろう
予感はしていたけれどね
あなたとのキスは必要とされるでも、必要とするのでもなく
....
プラトニックでも
自分に素直であれば
満たされると思っていたのに
彼に抱きしめられた瞬間
確かに 私は
物質的なものを求めていた
こんな事をしたのは
私のブラウスのボタンを
なんの ....
父との離婚から、
三度目の春が過ぎて
夏が訪れる頃それは始まった
母は男とお酒を飲んだ
ずいぶん前からの知り合い?
まったくちがう世界の男
またしても背の低い男
でも 仕事にはやり手 ....
客観的に見れば 私達 愛し愛されている者同志
いつか私達がお互いを必要とし
どうしても離れられなくなったとき
お互いの過去は置き去りに出来ても
苦悩は分かち合えない
力を抜いて 誰からも ....
交じり合う気持ちは
まるで砂時計のよう
かわるがわる満たし合う
でも いつのまにか
私の方が落ちて行く
いつだって空っぽ
返されないままに
「今夜は飲み明かそう」
と あなたが言い ....
グラスのぶつかり合う音
ワインを注ぐ音
私の右耳に響く低い声
ひと晩中 どうでもいいことを何気なく話すように
今欲しいのは 確かな手応えだと言ってみる
イイ香りね
ワインだけじゃな ....
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