散る花を運ぶ水面にゆれる
ふたつの影は黙して語らず
罪と咎とをひとつに乗せて
高瀬の舟は川を下る

祈るかたちの手を血に染めて
ひとを殺した罪人だとは
見ても思えぬ有様の

夢に疑う ....
誰かを抱きしめたくて
たまらない夜がある

互いの名前は知らなくていい

腕の中に温かい吐息を包んで
言葉で何かを交わすような
優しい気遣いはいらないから

飽き果てるまで貪り尽くし ....
おまえの書いているものは
詩じゃないと言われたことがある

手垢のついた表現を嫌うあまりに
簡単には読めも書けもしないような字を使い
日常聞いたこともない古い蘊蓄を込め
一読では理解できな ....
あなたのつがえる矢の先は
違わずに私の胸を狙っていた
寸分の狂いもなく正確に
心臓を貫くことができただろう
波の上に舟は揺れていたが
騎上のあなたは狙いを定め
かたわらの主が命じさえすれば ....
傷跡を残しさえしなければ
君が咬むことさえ許せるのに
いつまでも肌に蘇る感触が
耐えがたい苦痛となって僕を襲う
その瞬間は何も気づかないのに
後になってそれははっきりと現われる
あまりに一 ....
息をしなくなったおまえを
かたわらにそっと置いて
土を深く掘り返す
樹の根
固い石
そんなものをひとつずつどけてゆく
おまえの眠りをさまたげるものが
ひとつでも少なくなるように
無意味 ....
何色の花かわからない
窓のつぼみはもうほころびかけている
明日あたり最初の花が咲くだろう

今度逢えたらそのときに、それは
約束というものじゃなかった

どうしてもあんたに逢いたくて
 ....
なにげなく肩に手を置かれて
無理すんなって言われた
たったそれだけのことで
我慢してたはずのことが
ぽろぽろとこぼれはじめる
無理なんかじゃないって
言おうとしたのに
あとからあとからあ ....
マヨネーズの大好きなおまえは
なんにでもそれをかけたがる
それはもう見境なくて
見ている俺は食欲が失せる
どこへ出かけて食事をしても
注文がきたら開口一番に
「マヨネーズある?」って聞くな ....
僕が君の恋人でなくなって
君からおとうさんと呼ばれるようになってもうどれぐらいたつだろうか
人並みに恋をして結婚した僕たちは
人並みに親になって家庭というものを築いている
僕は君を昔のように呼 ....
夜半の月は無情に蒼く
帰ると誓った影はない
白菊の花は夜露に濡れ
冷えた袖はしっとりと重い
長い旅だとあなたは言った
待てぬと叫ぶこの手には
あなたが残した一輪の菊
時は重陽、誓いの盃
 ....
天に輝く月をみあげて
あれが欲しいとおまえは泣いた
水を両手にすくいためれば
掌に小さな光の幻
それは本当の月じゃないと
おまえは唇をとがらせる
おまえの見ているその月と
今手の中にある ....
振り向いた寂しい目が精一杯に訴えていた
何が言いたいのかすぐにわかってたけど
目をそらして気づかないふりをした
誰も知らない二人だけの秘密だと
約束したから何も言わない
遠い海へ船出した君の ....
はらはらほろり
あのひとが帰る
肩に降り積む雪のひとひら
ついてゆきたい
それはできない
せめても帰路の足跡を埋めて
なかったことにしておくれ

夜半の月
鏡の中に白い顔
黒髪の雲 ....
狼狼と遠く哭け

逆立つ体毛の針先に
銀の水滴をほとばしらせて
疾走する闇の底

毒毒
独独
激しく胸を打つ響き

叩き潰された虫の死骸
赤でも青でもない色に染まり

涙草  ....
なあ
おまえは知らないだろうが
報われない恋なんだよ
どうにもならないことで
そこから先へは進めないんだよ
誰が悪いというのでもなく
ただほろほろと泣けるような
どうしようもない恋なんだ ....
買ってくださいとうつむき加減に
冷えた指先は白い花を思わせた
不幸を売り物にできる時代じゃない
他をあたれよと背を向けたとき
飛ばされた風に散らばる花片
見開かれたままの瞳は残像をとらえ
 ....
すべてか無か
どちらかでなければいやだとおまえは言う
絶対でなければ安心できないか
愛か憎しみか
そうでなければ信じないとおまえは言う
決定的でなければ答えられないか
おまえを見つめるまな ....
一度きり
月は隠れ
闇の中にその眼を見た

答えはなく
沈黙のままに指は触れた

考えることが
なんの意味も持たなくなる

言葉でも心でもない
想いは強く激しかった

唇は
 ....
一筆(19)
タイトル カテゴリ Point 日付
高瀬舟自由詩2*08/3/25 0:57
抱夜自由詩1*08/2/25 1:26
これは詩か否か自由詩3*07/11/24 22:17
試し矢自由詩1*07/10/12 0:52
自由詩2*07/8/31 0:10
埋葬自由詩2*05/5/9 0:27
窓辺の花自由詩2*05/3/28 23:49
我慢自由詩3*05/3/8 1:04
マヨネーズ醤油自由詩4*05/3/7 0:49
主夫自由詩4*05/2/23 14:46
白菊の露自由詩2*05/2/22 0:08
掌の月自由詩5*05/2/19 12:37
銀河鉄道の裏自由詩2*05/2/18 9:06
雪月花自由詩4*05/2/13 0:51
銀狼自由詩3*05/2/10 13:10
寂しい恋自由詩4*05/2/7 12:26
雪花自由詩13*05/2/4 10:24
おまえのために自由詩2*05/1/30 21:54
189「暁の果て」自由詩2*05/1/28 10:15

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