まるで我が子を送り出すように
赤いポスト口にそっと茶色の長形3号の封筒を差し入れた
中身は頭で捻り出した詩をまずはワードアプリに書き出して
それから所定の原稿用紙に書き写したもの
この日の旅立 ....
テレビの画面上の竜巻警報
思わずギョッとする
表示したかと思えば消え
また表示されてから数秒で消える

「そういえば」
私は思い出す
職場の昼休み
ランチを食べに行った帰り
職場玄関 ....
信じたい
今は亡き祖父のことを
信じたくない
祖父が戦中行なった行為

祖父が戦いに行ったボルネオにも
台湾から強制的に連れて来られた従軍慰安婦達がいた
祖父は「戦地でカフェのマダムと仲 ....
相手に愛がないと解ったときどうすればいいのだろう
ただ黙って耐えるしかない
傷が癒えるまでただ待つしかない
そうして過ぎ去ってしまえばすべて忘れられる
何もかも無かったのだと

楽しくて胸 ....
二週間ほどが経ってもまだ興奮冷めやらぬ

二週間前の日曜日
確かに私は見たのだ
予想だにしなかった誕生日プレゼント
私にとっては一ヶ月早い誕生日のお祝いだった
しかもとても大きな大きすぎる ....
飛び交う砲弾は 罪なき子どもを傷つけ
飛び交う呟きは 罪なき誰かを傷つける

そこにはルールはなく
人権を無視した軽視や蔑視
差別発言が幅を利かせ
怒りの矛先はトチ狂った方角へと拡散し
 ....
小さくちぎった新聞紙
丸めてバケツの水に浸す
指先から冷たさが伝ってきた
「新聞紙で窓を拭けば、綺麗になるよ」
そう教えてくれたのはかつてお世話になった教会牧師の奥さんだった

年末が近づ ....
鬱蒼とした深緑のカーテン
僅かに差す光が私の頬を掠めて落ちた
柔らかな苔の上に敷きしめられた硝子張の針
歩くたび私の足裏の皮膚を突き破り赤く染める

白目を剥いた猫が白いシミーズの裾を
揺 ....
脳髄は夢をみる
確かな足音を聞きながら
子守唄は歌わずに落ちた
誰も聞かなかったのか
いや、聴いていたはず
虚しさと侘しさとそれからそれから

こんなにも輝かしい詩の片鱗がある
 ....
大小のシャンデリアから放たれる間接照明
ピアノの音が気持ちいい
カップから立ち上る湯気が香ばしく
焦茶色のくすんだ水面を湛えている
雨上がりの外の喧騒
車の走り去る音も人々の話し声も遮断され ....
I remembered the itchiness and raised my face from the screen of my phone.
Apparently, a small blac ....
厳かに高らかに
力強く情緒たっぷりに
高音と低音が混ざり合い
歌い上げられる

それはレクイエムなのか
誰かを弔うための慰めも
まるで静けさを破る息遣い
走り去る音霊は騒がしさすら凌駕 ....
長い間忘れていた友という存在
社会に出て日常に追われているうちに
記憶の隅に置き去りにしてた輝き
いま思い出した
いつもそばにいて笑いあう存在を
君がいつの間にか僕のもとに来てくれたおかげだ ....
まだ夜が明けぬ間にハルピンへと旅立った母
異郷で歌を届ける為だ

新入りだというだけで白い目で見られながらも
欠かさずレッスンへ行き家でも家事をしながら
テープを流して歌を歌っていた
その ....
夢の中でも詩を作っていた
映画のパンフの写真の切取りを二種類ぐらい並べて
物語風に詩を作っていくのだ

〝いまはまだ蒼い空の下で〟
〆の文句を考え付いたところで唐突にもう一つ詩を思い付いて
 ....
「本当にお母さんと声がそっくりね」
電話口に出てしばらく話をしてから
母の知り合いである女性にそう言われた
思わず顔を顰める

嫌なわけじゃない
ただ別人格であるはずの母とそっくりだと言わ ....
夜中の二時前
布団の上で頬杖つきながら
スマホのワードアプリから今この詩を打っている
頭の左隅っこがジンと響いて痛い
なぜこうなったのか
これからこの痛みについてどう対処すれば良いのか
わ ....
前日降り続いた雨は畑を潤し
昨日一昨日のひび割れた白っぽい地面とは
打って変わってまるで沼地のように
どろっと水を豊富に含んだ地となっていた

そこから生える緑色の若い芽は
眩しそうに群れ ....
熱い湯船に浸かりながら昼の出来事を思い出す

病院の帰りに行きつけの喫茶店に立ち寄った頃の話
私はお気に入りのコーヒーを片手に
瀬戸内寂聴氏が現代語訳した源氏物語を読んでいた

そこへ現れ ....
昼前の日差しはまだ苛烈に地上を照らし続け
ひとの肌を焦げ付けてやまない
熱波で急激に上がる体温を持て余し
真っ赤に火照る顔に
滝のように止まることを知らぬ汗

裏腹に農協主催のレクリエーシ ....
まだ残暑厳しい夏の日差しを体のうちに残しながら
クーラーの効いた病院の待合室で
自分の名前が呼ばれるのを待っている

なんとか予約時間に間に合うように
自宅から病院まで必死になって自転車を漕 ....
ゴミ集積所の傍でカアとも言わず
嘴を半開きにしたまま突っ立っている鴉

数分前はゴミが置かれ
今は塵一つない場所を目を丸くして見つめ
まるでひとのように呆然とした体でいる

私は家庭菜園 ....
バスから降りた途端
ざあーと襲いかかるように雨粒が落ちてきた
薄緑に茶色のフリルのような模様の傘を急いで差して
目の前の喫茶店へと一直線に走った
大きなガラス張りの洒落た白い喫茶店の
ギシギ ....
濁った空の下
確かな職もなく
行き場の無くなった人々がカラカラに乾いた精神(ココロ)を持て余し
ただ、何の希望も見い出せずにその場限りの生活を送っている

彼らのたったひとつの持ち物はコイン ....
水分を含んで少し重くなった衣類のカゴを片手で持ちながら
スリッパを履いて縁側に降りたつと
低木の緑の陰から一斉に黒いものが飛び出した

喪服を纏った蜻蛉だった

体にまとわりつきながら飛び ....
喫茶店のカウンター席で少し苦味の強い珈琲を啜りながら辺りを見回すと
カウンターの真上一直線に吊られた細いステンレスの棒に
ドライフラワーふた束が仲良く並んで吊り下げられている
そしてそれらに並ぶ ....
重なる手紅い血潮に墜ちてゆく
祖国の夢も幻にして
今度はどんなうたをうたおうか
三時を少し回ったばかりの鴨川のベンチで川の香りをかすかに嗅ぎながら
風に揺らされたまま少し汗ばむ額に張り付く前髪かき揚げ
ごぉーごぉーと唸る白い水飛沫をみながら
 ....
第二次世界大戦中の上海
天皇機関説を唱えた美濃部達吉の弟子だった為に
難を逃れて移り住んだ家族
話をしてくれた女性の方は当時まだ幼く
美濃部の弟子だった父親が教鞭を取る
東亜同文書院大学近く ....
和室から見える景色はまさに夏そのものを現している
水色に薄められた絵の具に白を淡く馴染むように付け足した
そんな背景
伸びる焦茶の自由な線に緑は白く光り
ときおり吹く生暖かな息に気持ちよさそう ....
栗栖真理亜(533)
タイトル カテゴリ Point 日付
旅立つ自由詩2*25/1/31 18:26
竜巻自由詩3*25/1/31 18:19
あやまち自由詩2*25/1/30 10:05
White out自由詩1*25/1/30 9:50
Surprise自由詩1*25/1/30 1:42
SNS 〜正義なき戦争〜自由詩3*25/1/28 20:10
離散家族自由詩3*25/1/28 19:41
彷徨う自由詩1*25/1/28 13:18
孕む自由詩0*25/1/27 19:48
安息地自由詩1*25/1/27 11:48
How to kill insects伝統定型各 ...0*25/1/27 1:03
Requiem自由詩0*25/1/26 17:18
Friendship自由詩0*25/1/26 16:45
母、ハルピンへとゆく自由詩0*25/1/26 9:29
睡歌自由詩225/1/25 15:49
Copy自由詩2*25/1/25 14:44
暗転自由詩225/1/25 1:37
充足自由詩0*25/1/24 15:38
怨念自由詩2*25/1/24 14:20
水浴び自由詩125/1/23 23:53
待合室自由詩1*25/1/23 15:30
自由詩0*25/1/23 11:09
翡翠自由詩3*25/1/22 23:01
或る貧困労働者の祈り自由詩2*25/1/22 14:12
蜻蛉自由詩1*25/1/21 23:51
青い鳥自由詩2*25/1/21 20:48
怨歌短歌0*25/1/21 14:49
暇を持て余す自由詩1*25/1/21 13:53
上海租界自由詩225/1/20 20:43
羽蟻自由詩2*25/1/20 18:48

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