リリリリンと鳴く鈴虫の
涼やかな音に魅せられて
そっと瞼を閉じて暗闇のなかで味わう
掠れながらも必死に相手を呼ぶ
その切羽詰まった思いが
リズムとなって生を刻んでゆく
誰かに何かを伝え ....
井戸水で泥を払う
ラディッシュはたちまち濡れた肌に日差しを浴びて紅く輝く
まるでルビーのように
粘土のように粘りのある泥を深緑の髪とともに冷たい水で洗い落とし
さっぱりとした體でこちらを見 ....
こたつテーブルの上
底に茶色い番茶が残ったままの
少しだけノッポなグラス
パレメザンチーズと
粗挽きコショーの入れものと
メガネケースと黒い髪ゴム
それから雪男みたいな図体の
ウルトラ怪 ....
ようやく冬支度を始めた夜の気配は
肌冷たくひと撫でする
慌てて布団に潜り込み
達磨のように目だけギョロリと
外の気配を窺った
掛け布団の肌触りはまだ冷やっこく
徐々に体温で温められてゆくの ....
脊椎管狭窄症となった母
腰から足先までの痛みを訴え
起き上がることも座ることもままならず
歩けば足を引きずっては立ち止まり
痛み止めを強いものに変えてもさほど効果なく
右足にきつく巻きつけら ....
原野を切り拓き
見知らぬ動物を知る
そこに危険極まりないウイルスが
潜んでいることすら知らずに
人々は家畜を大量に飼い
化石燃料を大量に掘り起こしては使う
透き通る空気はやがて
二酸 ....
表現することに貪欲な幼女はいつしか誰にもわからない
自分だけの表現を見つけるようになった
こころの底や隅っこに引っかかった蟠りを吐き出そうと
黄色いクレヨンで半月の顔した人物を描くも誰の目に ....
軒下で蟻たちが黒い列を作り蠢いている
そこへ一匹の蟻が逆走して他の蟻を押し退けながら強引に進もうとしていた
蟻同士はぶつかり合いながらなんとか狭い隙間を縫って歩んでゆく
(去年までの私もこ ....
詩人たちは皆何がなんでも
会を存続させる意思に溢れていた
総会は紛糾して最後まで意見は纏まらない
そんな母の思惑は外れ
詩人としての居場所を守りたい
そんな活気に溢れていた
詩で集い ....
伝えたいもの
それは人の涙
ではない
伝えたいもの
それはひとがひとであること
毎朝目が覚めればそこに
気を許せる家族がいて
友人がいて
職場の仲間がいて
ごく平穏な毎日を送る幸 ....
モワッモワッと湧き出てくる
まるでヤカンの湯気のように
必死に掴み取ろうとペンをとる
すぐ消えてしまう前に
絞り出すも思い通り整わぬ
僕の詩
黒い土煙
まさに暴力の温床
その土地で生きる人々の思いを裏切り破壊してゆく
美しい波間にゆらめく海藻も
鮮やかに咲く珊瑚礁も
悠々と泳ぎ回るジュゴンも
粉塵と共に消し去られようとし ....
僕らの手足は切り取られた
鋭い歯の電動鋸
体もやがてバッサリ切り落とされるだろう
人間達が遊ぶ為の大型の施設が作られるらしい
髪の毛を乱して抵抗するも虚しく
はらはらと散ってゆくだけ
....
自分のコト好きなクセにキライになる
やるせないキモチにこころ乱され
メチャクチャにしてキズ付けたくなる僕さ
薄暗い部屋の中でベッドに寝転び
ボンヤリと天井を見上げれば
紅い血がポタポタ滴 ....
こころに刻むように君の面影を想い浮かべ君の名前を呼ぶ
胸の奥底から沸き上がる慈しみが私をヒトとして在るべき姿へと蘇らせ
愛しさが果たせぬ夢を苛む
君の幻が湯船の小波に揺られて煌めいていた
....
4年ほど前、「傾き者になりたい」と言っていた彼
その数ヶ月後、彼は舞台の上で赤い派手な着物を着て
見事、傾き者になってみせた
見る者を魅了させる粋で艶やかな立ち姿
それから、月日は経ち ....
透きとおるほど美しい海に伝わる伝説は
哀しみの泡となって今も水面を漂う
愛しい人のために流したあの人魚の涙も
広大な海の中へと埋没し深い淵へと還ってゆく
あぁ、静かに波立つ碧い水しぶきが
....
黒いソファーに腰掛け
ジッとコチラを見つめてる君
君はいま何を考えているの?
その瞳もその唇も
何かモノ言いたげに僕に笑いかけているけれど
被写体と現実社会との境界線が
強固な壁となって阻 ....
冷たい雨粒が雫となって頬を伝う時
君への想いが溢れ出す
胸元の熱い幻が僕をあの頃の記憶へと引き戻すよ
初めてふたりが出逢った時
まるで惹かれあうように見つめあった
君は優しく微笑みながら ....
燃えるような思念が月明かりに照らされて夜に漂う
あぁ、いますぐ君の腕にしがみ付いて
そのまま溶けてしまえたらどんなに良いだろう
たった独り不安定な砂利道を歩く侘びしさよ
歩くたびに小石 ....
雨上がりの風が湿った土と緑の薫りを舞い上がらせ
柔かな陽射しに溶け込んでゆく心地良さよ
眼を転じればピンクに色付く薔薇の花びらが露に滴り
淫らに揺らめいているよ
あぁ、ヒンヤリと冷たい空気 ....
君のいない夜はココロにポッカリ穴が開いたようで
僕の頬から塩辛い涙が
紅い血を滲ませながら溢れ墜ちてゆく
あぁ、君を愛しく想えば想うほど
もう一人の自分が瞼の奥に映る君の姿を
冷たく突き ....
私の愛しいヒト
聞いてください
どんなに高価な指輪も服もバッグもいりません
莫大な財産も家も欲しくありません
その代わりあなたの本当の愛が欲しい
だから聞かせてください
あなたのココロ ....
届かない声に耳を澄ませてごらん
どんなにか細く周りの騒音にかき消されそうでも
ほら、聞こえるだろう?
キリキリ痛むココロが僕の瞳から涙を溢れさせて
奇妙な音色を奏でるんだ
決して届かぬラ ....
いつになったら君の背中に追いつけるのだろう
僕の指は戸惑いに震えて君にしがみつく勇気すらない
灰色に澱んだ空を見上げて黒く濁ったため息をつくばかり
そっと舌先を口のなかで転がせてみるけれど
カ ....
かけがえのないものを喪くしてしまったんだ
それはまあるくて透明な硝子のように冷たい
サッカーボールぐらいの大きさの球さ
純粋で壊れやすく
くしゃみをしただけで
粉々に砕け散ってしまいそう ....
闇夜を照らす月は汚れなく真っ白な顔を見せる
あぁ、優しく照らす光の先に貴方がいる
包み込むような慈愛に満ちた瞳で
私を見つめる貴方が・・・
私は秘めた胸の内を月に託し
瞼を閉じて
....
墜ちてゆく黄金のブリザード
渇いた風に晒され
まるで細かな粒子の一粒一粒が
この世を厭うかのように散りゆく虚しさよ
奈落の底に集う
軟らかな日射しの絶え間ない輝きが
旅人の眼を射るよう ....
絡み合う糸と意図とを手繰り寄せ
巧みに操る人形遣い
踊り狂う人形達の破廉恥なまでの動きは
彼の唇に薄い微笑(えみ)を浮かばせ
鋭い眼光を三日月形へと和らげる
ああ、堕落と酩酊の狭間へと送 ....
ココロがふやけて何もかも白紙に戻ってしまった
あぁ、僕はなんて意気地なしなんだろう
額を打ち付け紅く血で染まった壁を見つめながらそう呟く
もしも、このまま君が帰って来なかったら
僕はど ....
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