ありのままの俺を
好きになってくれる女性を
俺は好きになる
そう言って
二十年以上経った同級生は独身だった
自分の好きに生きる人生は
納得出来るから いいわけだ
....
加茂川べりに
あの人が佇んでいる
錯覚だとは
電車の中で気がついた
冷たい舗道に降りてから
しっかりと足早に歩きすぎながら
それでも後ろを 振り返ってみたかった
....
辺り一面
風 逆巻いて
身体の浮き上がりそう
其処に 貴方が居るから
無条件でしがみ付く
「あ、今度はジャンボ機や!」
黒壇の様な空に灯る
右翼端の緑
左翼端 ....
四国に続く山脈に
雪が積り
社の石段に降る雨に
心を洗った後
醜く見える貴方の顔
その薄い唇に
私の唇触れた事が嫌悪を誘ったとしても
私の責任ではない
何 ....
氷雨ふる
揺らぐ湖面の深川鼠
畔のみち樹木の間、
銀の飾りの濡れぬれて
あの高い枝の末端から
最後の一葉、落ちたなら
老婆の干からびた爪の先
ひび割れる音がしない ....
スーパーの食品売場
高らかと流れ始める
映画『ロッキー』のテーマソング
バックヤードから颯爽と登場する
二人一組で値下げシール貼り回るアルバイト達
曲がサビの旋律になれば ....
雑然とした卓に
ちょっと戯れに挿した
寒椿の 紅い沈まり
眠れないのです
時は重たいものですね
全て寝静まっているのに
音があるのです
秒針が刻む
藍 ....
止まらない
人類の負の動力源は
一握りの
山脈より
大洋より
強い者たちの
掲げる道理なのだろうか
連日報道される中東紛争
はためく旗の下、
生きねば ....
17時回ったスーパーの精肉コーナー
陳列棚に、値下げされた鶏もも肉少量パックが
取り残され上目遣いで
私を誘惑する
手が伸びる けれども
チキンライスを食べたいわけじゃない
....
延暦寺西塔の居士林、
森閑とした闇に包まれ坐る道場
打ち鳴らされる警策で
突如 目を見開くと
秋霖
湿った杉の並木が
生い茂り
霧のなかに太い幹の影を映して
....
「紛いもの」
凪の夜
寒空が黒いインク
こぼした水面、すべりゆく
遊覧船は
まるで冥界の古城
「中古マンション」
三階で 物干し ....
酒房に足をふみ入れたとたん
行方の知れなかった心が
戻って来た
日頃 胸の底に巣喰う黒いものが
熱っぽく溶けて肉にしみ入ってくる
私に降る 師走の雨
....
週末の京都駅
待ち合わせたプラットフォーム
喧騒の波間みつけた
あなた
月に一度も逢えない
あなたの指が触れる洗い髪
ムースで整えて
玄関飛び出して来た
夏の ....
ほの暗い空に尖ってゆれ動く
銀杏の枝先 路端の枯葉
手袋はめる指先
冷たさ滲み
駅前
ためらうことなく夜を受け入れた街
バスターミナル
無人のベンチ
男物の ....
寒風、
常緑樹の生垣が吐く
銀白と やがて溶け
やさしげに揺れる
山茶花
乾いた大気
緋色砕けて心臓響く
天上は真夏
大柳
烟り散る冬の湖面
「食卓」
サラダの皿の色どりに
執着しつつ
缶ビール グラス注げば
勤めの愚痴がついと出る
貴方との白いテーブル
「霧の朝」
冬が来て
裸木ば ....
三分咲の桜が好き
と云う私に
葉桜が一番好き
と 笑った彼女
「なんで?」
ほのぼの香る色にも
一閃の青をみる
硬質感ただよう清らかさ
結婚前の彼女は答える
....
小さな寺の鐘の音が
震うともなく
ゆれて
声を出せば
全て偽りになるに違いない
はかなさが
西山の山脈に暮れていくのを見ながら
一人歩いていると
酒場の騒音 ....
「心」
生命の底にあるのが
わたし
野を吹く風にさからって
歩いていると
影絵のようにみえてくる
「大衆食堂」
店の母さん 常 ....
「独白」
霜の立つ
音のきこえそうな
夜に一人で居る時は
吐息など捨てようと
幾度 思った事か
「街の鴨」
商業施設の脇を流れる
堂の川 ....
いつになく長風呂し
秋刀魚の蒲焼
突っつく晩めし
身の冷えぬ間に寝間へ入ろう
熱燗一杯キュッと飲み干す一人者
男と女は
なるようにしかならない
そんな事 知ったのは社会人になってから
季節など覚えちゃいない曖昧な記憶
空に陽の傾きかけた
あの日
百貨店の正面出口前の交差点 ....
霜月の
薄らさむいキッチンで
蒸気放つ きみと
僕は今、
目をはっきり開けたまま
夜の開ける瞬間をはかっている
そして
沸点こえる
きみの 紅い血は
....
ハイヒールの足許が
男の鼻先を嘲笑う
「欲しければ
尾を振って ついておいで。」
街の角で
ふと女の姿が消えた
「欲しければ
そこで 涙を ....
夜も深き高層の谷間
鈍く 唸りあげて吹くものは
誰が為に在るのか、
目覚めると不意に
もの哀しさ 我包む冬
前方見据える少年の
斜め後ろに 立つ私
光 放った彼の眼鏡、
捉えた朝の密度濃く
信号機は青になる
薄ら陽を
追いつつ鉢を離れ得ず
小さき金魚の褪せし思いして
胸の底 暗く重く
ちろちろ火の燃え続ける
イノチガ フト
オモタクテ
窓ヲ アケルト
ヒトツ フタツ ミッツ
カゾエテミタラ
ココロガ カルクナッタ
アカイノ
ホントニ アカイノ
イマニ コガラシガ ....
窓を 開けると
取り残された柿の実が赤かった
よく解った 空の高さ
窓を閉めた私は
夕飯のお味噌汁の大根きざむ
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