冬になるとおでんなどの他に、父は湯豆腐を作った。というのは共働き
の妻が相当料理下手だった。正確には家事全般に不向きな人で、冷蔵庫の
冷凍室に恒久鮮度を見、洗濯機には水流が回らないほど詰め込み、 ....
私は蝉の声の中で、ひぐらしのものが一番好きである。少し緑がかったボディに透き通るような翅というビジュアルも美しいと思う。夕暮れや明け方にカナカナ……と聴こえてくれば、夏の終わりを含んでいるようでなん ....
どれだけ乱雑に穴をあけてもあなたが上手に枠をつくるので素敵な窓になってしまうのであった。わたしの体
あおむけにした手のひらは雨をうけても陽をうけてもなにかを掴むことをせず、笑ったり泣いたりするの ....
そういえば、
と千津子は言った。
貴方何時までここにいるんだい。
天気は晴れかそれとも雨か。
飴でも降ってくれねえかねえ、
そんな事を思いながらお前に飽きる迄だよ等と、
笑いながら答えると ....
書かなくては、と一年ぐらい思って、書けなくて、私よりも書くべき人たちがいるような気がして、(待っていたのかもしれない)、未明、眠れなくて、アイスクリームを食べたら目が覚めてしまった、薄暗い。こんな朝。 ....
1. Are you better than A ?
「今から入る『応接室』はすべてが本物ではありません」
と茜が言うので覚悟してドアを開けてみればそこはよく知っているはずの松ノ丘駅、高架 ....
時間という途方もない罪のなかで、許されるとしたら何があるだろう。たとえば夜、わたしは座って往来を聞いている。電車の行き交う音とサイレン、携帯電話にむかって笑う若いひとの声、風。時折虫が、(蝉だろう ....
かしましいねェ。
ひとが気持ち良くうつらうつらしてたッてのに。
あたしは、よっこらせッと起き上がり上の階を覗いてみた。
幼い姉弟が鬼ごっこをしていた。
椅子を借りて子供たちの甲高い笑い声を聞い ....
夏はすずしく 冬はあたたかく、ブンメイは シゼンの恥部ではないけれど だとしてもニンゲンさまは 太古から コトバをもちはごび なつもふゆも てきかくに とらえたりして あいまいに制御する ことも可 ....
{引用=夏の光に
夏がきても病気のように冷たい光はあった。
それはぼくのなかにあった。物のなかにあった。
いたるところにあった。
空気が重くなり、雨がふりはじめた。
子どもたちは手のひら ....
.
{ルビ蠍=さそり}って食用の虫だって知ってました?
中国では、蠍を養殖しています。
ペキンで食べたフルコースのデザートは蠍の唐揚げ。意外に美味でした。イナゴよりはよほど旨いです。。。 た ....
ワシは、国家を動かしている輩どもの腐った根性が気にくわんのじゃ。
あたしだってそう、ほんと馬鹿にしてるわ、あたしたち一般市民を。
ぼく、そんなこと思わない、高級官僚だって、代議士先生だって、 ....
(一)
ストーカーという言葉など存在しなかったころから、俺は陽子一筋だ。中学二年の春、同じクラスになった時からずっと。高校二年の時、文通して下さい、と手紙を書いた。思い切っ ....
とわの市とわのの
喫茶店。
ネネは
俺の懐を察して、
トーストしか頼まない。
外に出ると
「まあ合格かな」
トーストだけで、判断できるかよ。
どんだけ上級者だよ!
このア ....
私は庶民である。ごく普通のサラリーマンであり、その他大勢のサラリーマンと似たような暮らしを送っている。世の中の大多数の人間と同質な生活をしているということ。私はそこに平凡でありながら限りなく豊か ....
宝籤はもうすぐ二歳になる。相変わらず尻尾の先をわずかに白く染めているかわいい黒犬。でも、もう自分の手足を持てあましたようなちぐはぐな動きは消えてしまった。暑い日、賢い番犬よろしくブロックのうえに身 ....
先日私が散文カテゴリーから投稿しました「皆さんへ」へコメントを頂き有難うございました。
トップ10入りは叶いませんでしたが様々に反応されたのを興味深く思います。
ポイント制というものを数値化すると ....
{引用=青うみのひかりはとはに明滅し 〔歌稿A〕}
1
金銀玉石の楼閣に紫朱の花びらがふりそそぎ、池には蓮がいつも満開で萎れも枯れもしない。大きな葉の先には透きとおった ....
え? なぜ人を殺してはいけないのか? だって?
どうしたんだい? 突然そんな質問をするなんて、
ずいぶん元気がいいねぇ
何かいいことでもあったのかい?
まあ、冗談はさておいてだ ....
「わかってる わかってる わかってる・・・」 といいながら
マリークロッカスは歩いていく
「わかっているんだけどなぁ・・・」
と 見上げた空には
悲し ....
夏の夕方の空気はひどく湿っていて、
身体にまとわりつくように重い。
何故だか涙がでる。
私が言うと、あなたはそっと微笑んだ。
それはね、
風が街を巡り、みんなの悲しみを絡め取り、
そのまま ....
雑なままでも書き残して思う。
詩を書き始めたのは2001年ごろだったかもしれない。
詩のサイトは最初に流れ着いた日本WEB詩人会。
そこで会員になって投稿していた。いいとこだった。
今書き ....
高校生の頃、おそろしいほどイケメンな男が、同じクラスにいた
イケメンと言えば、誰もが女に囲まれて幸せな人生送ってる奴と思うが
そのイケメンは、無口、不登校、何考えてるか、さ ....
あの頃わたしの精一杯で生きていた。
遠い記憶は優しいものではなかったが
大きな怪我も病気もせずに
三十年以上生きてこられた。
親には感謝すべきなのだろうが
生憎ずいぶん前 ....
彼女は自殺者の顔を石で叩き潰していた。手が付けられない程の怒りようだった。僕としてはおろおろするしかなかった。僕は自殺者の親友だった。彼は言っていた。「僕は全ての為に生きたいんだ。他の全ての命、誰かの ....
今の日本では、誰でも理科の教育を受けると機械論的自然観を植え付けられる。自然界は元素の組み合わせでできています。自然は量的に計測可能です。厳密な実験に基づいて自然を利用していくのです。だ ....
そうだなあ。壊すなら街が良いね。とくべつ硬いやつ、と、言ったとき、あなたはもうわたしを愛さないと決めていた。美しいは残酷だから、わたしたちは生きていける。もうずいぶん長いこと言葉に身を埋めて、はっ ....
「あらあら、どうしたの? 健ちゃんはなーんにも悪くないからね。よしよし」
保育園から泣いて帰ると、そう言って抱きしめてくれた。乳の匂いがした。大好きな幸恵(さちえ)の胸に抱かれて、泣きじゃくりなが ....
私はかつて[緑病]と呼ぶべき奇妙な病気に罹ったことがある。
それは十八歳くらいの時で、高校を卒業して初めて社会人となって働き始めた頃のことだった。
なぜか緑色に魅かれて、服も靴もバッグも帽子も身に ....
薄暗い姉達の部屋で、僕はズボンとパンツを脱がされ、ただぼんやりと立っていた。
「いーい、健太はおちんちんの病気だから、今から先生達が診察してあげるからね。じっとしてるのよ、判った?」
「うん」
....
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