名前のない日はいつも
ぽっかりとあいた穴を避きてとほる
穴のうへをとほる 過剰な時間 と その欠落に
わたしはただ広く 穴をあけてゐる
名前のない日に
わたしはこう名付けられた
それか ....
風を
えらべるはずもなく
帆船は
風にはこばれて
船乗りの
陽気なうたや哀しみが
だれにもえらべぬ
風となる
帆船をはこぶ
風となる
光がなければ 色がない
置き忘れられた自転車も
錆びついたレールも
高いビルも 小さな家も
道も 人も 河も
境界線はあいまいになって
等しく
やさしい黒に抱かれる
しづかな しづ ....
残業に疲れて、
地下鉄のつり革につかまって、
エスカレーターの列に並び、
街灯の下を、
とぼとぼと歩いて帰って行くと、
窓から、
あの子が、赤ちゃんを抱いて、
「パパ!」と手を振る。
....
ねえ 聞かせて欲しい
あたしたち何処へ 歩いてくの
ああ このまま 何も変わらないのかしら
この くすんだ町で
ただ毎日 くすぶってるだけ
なにか 目の覚めるようなこと ないかな
....
明るいところでいつまでも暮らせない、小さなしるしがなくなれば、ひとは、くらい路地の真ん中でひとり佇むかげになる、ほんのわずか、外界と自分を区分する薄い膜のせいで、聞こえる音が見える世界 ....
焦ってるみたい
君は曖昧に笑う
太陽に反抗的な日がある
シルエットが刺々しく
じわじわと矛盾を抉るよう
冬枯れに吐息は危なげで
止った空は厭に低く
君の生まれた十月の国で
うたうように眠りたい
銀木犀のしずかなかおりが
漂う夜気に包まれて
丘を木立をぬって流れる
川のせせらぎを聞きながら
幼い君が 少年の君が
夢 ....
冷蔵庫の扉が
閉まらなくなった
代わりに
炊飯器の蓋をつけた
閉まるようになった
炊飯器の蓋には
冷蔵庫の扉をつけた
毎日、ご飯の時が
重くて大変だけれど
つらいことばかりじ ....
縄文土器を
保健室に忘れてしまい
取りに戻った
夏の日
熱く
熱く光は燃え
廊下を歩く人たちも
ブラスバンドの行進曲も
そう仕向 ....
七千八〇〇万年前の先史時代の海で、プレシオサウルス(Plesiosaurus)は、赤子を産んで育てていたらしい、胎児の化石の写真でやっと記事になる、現代で
風に吹かれて なずんでいくから
....
なんという晴れやかさ
観葉植物の鉢は昨日まで湿っていたのに
靴跡がすでに乾いているのは
なんだか気持ちわるい
しきりに動きながら立ち止まる女性
俯いた姿勢に脚もとの ....
現実はどこまでも
不確かだから
その愛し方を教えてほしい
+
これはあくまで想像だけれども
わたしやその他の女性を抱くとき
あの人はことばの風景の中にいて
女というひとつのこ ....
夢とか希望って軽々しく口にしてはいけないよね
これでも恋わずらいなんだろうか
鬱陶しさに心は暗く沈んでしまっているけど
なんだか身体は心模様とはうらはらに
不思議と元気みなぎっている
....
眠れない腹いせに
異国の革命に
いつでも言おう
それは違うと
はっきり言おう
それが好きと
眠れない腹いせに
ちょっとそれだけのつもり
友達が霧のように消えて
....
大きな雪原に小さな染みのような点
黒い点は次第に拡大し一匹の黒い犬に
大きな黒い犬は狼にメタフォルモーゼする。
孤独な雪原の染みはじっと前方を凝視した後
素早く雪原を横切り
エルクの群れを追 ....
箱のなか
真っ暗な箱のなか
起きたら箱のなかにいた
頭は妙にさえていて
箱のつなぎめさがしてみたり
押したりしてみたり
最初はでようとしたんだ
暗くてなにもみえないし
元 ....
そうやこれは戦争なんや
戦争やから死んだって誰も責めへん
殺したって誰も責めへん
寂しい言うたらあかんのやろ
会いたい言うたらあかんのやろ
鬼軍曹に殴られそうやもんな ....
この香りが五月でもないのに
懐かしさが全身に{ルビ迸=ほとばし}る
僕は気になる この香りが
逆らいに倒れた僕をそっと
この華奢な体が抱いてくれた
揺れまいと
木の葉が{ルビ頑=か ....
花は散るから美しく
儚い命だからこそ
強く輝く
薬漬けで得た美しさは
骸骨に装飾したような
命の消えた冷たい屍に見える
長き時間
その美しさを楽しむのなら
一瞬でも
本物の命 ....
ざらついた筆しか持っていなかったからか、それはひどく感応して私を食んでいた。
漏れ出た色水は濾過せざるを得ず、それ故浅瀬には圧倒的に蓄えが足りなかったのだろう。
紙に貼りついていたはずの砂は、何処 ....
まだ記憶の定かでない幼い頃一人目の私が前を歩いていた
八才の頃引っ越しした先に二人目の私が二段ベットの上で寝ていた
十四才の頃突然ホームルームしていると三人目の私は教室に入ってきた
....
確かな肌は 赤い壁から生まれ
離れられない 触ることはできない
特別な言葉は簡単に見ることができる
話すことができない人にとって
真珠貝で穴を空けて
待つことなど
あなたは ....
あの軒先から香っている金木犀
もう暗い、足音一つの帰り道
そういえば一緒に歩いたっけ
「しばらく、もう会えてませんね。
目が二個と口がひとつあったことは覚えているけど」
手紙から日常 ....
炊きたて ハトムネ ひだまり タピオカ
見惚れて ボルネオ あいまい 灯台
くるぶし 波風 触れ合う スイヘイ
神々 うみどり 洞窟 あかつき
ハノサキ 透明 ゆびさき スイテ ....
こんな夜は
いろんなしめじを
慎重につくえに並べたい
小さいしめじは左のほう
おおきいのはまんなかで
右がわにお前がいなくて
ふにふにしてて
根っこはザラついてて ....
まえにきたことのある
かんこうちをおとずれた
かんこうちには
まえにきたときの
わたしたちがいた
わたしたちは
もうくるな、と
わたしたちにいった
だからわたし ....
さあ、ひっこぬけ
右下奥歯の親知らず
メスで肉を切り
ドリルで歯を削り
ペンチで根っこを引っこ抜く
注射で右頬全体は麻痺はしているが
振動は余すことなく脳に響き
煩悩は遊園地の海賊船のよ ....
青灰色の夕暮れに
鳥の群れ
黒い影が
青灰色の夕暮れに
ぼくはあなたとはぐれていた
ガキの頃からのそれは宿命だ
青灰色の夕暮れに
鳥の群れ
黒い ....
さあ、やろうか
今度は動きだすかな
君の頭の中
ずっとずっと
止まったまま
動きたくて
うずうずしている
巨人、ドラゴン、少年に
女王様も
君が創ったんだから
後は
産み落として ....
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