黙って手の指を見つめる
いかにも繊細すぎる指が伸びる
まるで毛細血管のよう
心も考えも何もかもが細かく
脳のシナプスのように連なる
見えない何かに怯え
聞こえない神の声もキャッチす ....
南の空に黒雲が立ち込める
殴り倒したい怒りに支配されても
沈黙し自分を責める
こころ
根底に潜む憤り
怒りが俺を蝕み
死をもたらそうとする
西の燃える空に
最期の三日月が突 ....
外は曇り空
親指の爪が伸びている
じっと見つめる
この歳になっても
相変わらずの不器用もの
若者をみて妬んだり
羨ましいと思う
雨音の予感がする
恵みの雨の予感がする
....
静寂に火を灯す人の声が
柔らかくて肌を滑るマシュマロ
撫でてあげたくなる普通の暮らし
弾む会話の出所が知りたい
同じ食事と短い睡眠で
命を縮めた願望の淵に
駆け付けてくれる友達を失 ....
目を離した隙に
幼い子供は大人になってしまい
取り返しのつかない歳月は
アルバムの中に閉じられた
明日へとかかる橋の欄干に寄りかかって
遠くに見える昨日の夕陽は
泪に霞んでしまう
....
色褪せたクリーム色の壁、不自然なほどにしんとした空気―わたしはたまにこの景色を病室のようだと感じることがある、でもここは病室ではなくて―まあ、そのことはあとで話すことにする…道に面した壁はすべ ....
みかづきをみた。
空は真っ青なよる。
すべりこみセーフならいい、
いや別にどっちだっていい。
たるんだ自転車のハンドルをふらふらさせて、
よみち。
狸がひらいた居酒屋があるんだって、
と ....
帰り道に空になった弁当箱に納めたのは月でした
夜の道路にころりと落ちて悲しくて
これでは死んでしまうと思ったので
それにしても十月は騒がしく
息は
吐かれるのを忘れられたまま
コン ....
みたこともない
みなみのくににむかって
いっせいに とびたつ とり
ないかもしれない
あした にむかって
ゆめを 放つ
たどりつけるのかどうか
じつはわからない
ふゆのむこ ....
近づいて来る人
去って行く人
巡る日々のその中を
波打つ光に包まれて
優しい笑みを浮遊させ
車椅子の老人が
彼方の蒼穹仰ぎ見て
運ばれていく秋の午後
わたしは独り心のなか
静かに ....
電気を17cmに切り刻んで
カーボン紙に時計をコーティングさせて
夕日の足跡の子供のしわに
「ああもうすぐできないね」と叫ばないで
辛くてもネズミを愛さないで
私のこのコンクリートが
....
もしも、
ああ、もしも、ね
もしも願いが叶うなら
もしも、
ああ、
もしも許されるのなら、
今年のうちに
すべてを忘れてしまいたい
古い記憶から
あの日の寝室の記憶ま ....
陸上生物の楽園が地上
始めるのをやめるのが
僕の特権
冷たい蹄をぬかるみのなかで
歌わせていようよ
跳ね回るノミが煙みたいに見えた
死の間際の君は赤い炭みたいに見えた
近い場所か ....
わたしは粉々になった
わたしの破片をすべて集めても
貴女には成れない
貴女を粉々にして
わたしの持たない破片を拾っても
貴女には成れない
貴女がうらやましいと思ってしまったあの日
....
丹後富士の頂へ
うろこ雲が巻き上げられていくと
明日は雨が来るといつか聴いた
あれはだれの言葉だったのか
町を歩く人びとは明日の雨を思い
空を見上げることはないようで
誰もが今を足早に ....
一羽の鳩は飛びゆき
一羽の鳩は堕ちゆく
空を見上げる子らは
羽ばたきしか知らず
星のかがやきに浮かれ
草葉の陰に横たわるものは
人知れず退場するだろう
さめざめと僕はたたずみ ....
この時期には
必ずこのお題で書いている
今年は何と言っても
空飛ぶ宗教家が絞首刑にされた
ことだろう
マスコミはいつも
肝心なことに触れない
奴は空中浮遊の達人で
アニメで ....
マスカラの羽根がまつ毛を広げて
飛び出そうとするロケットの軌道
瞬きの数が増えるその度に
大切なものを見逃したから
涙で滲んだ黒いカラスが
目尻に落とした旗を掲げる
異物の入っ ....
化粧をしない女と
化粧をする女
口紅を塗らない女の唇は渇くばかりで
あったかもしれない
口紅を塗る女の唇は艶やかに濡れていたに違いない
朝
彼が目を覚ましたのは誰かの足音が耳障りだ ....
誰も何か言っているようで言っていない
仮面を被ったままでモゴモゴと
責任は誰も取りたがらない
まるで霧のように実態がない
聞きたくない文字の羅列が降り注ぐ
顔をあげてもそこには何もない
....
僕は、
「君の背負った悲しみを僕にも分けてくれないか」
と懇願するから、
君は、
お気軽に
「いいわ」
と応えてくれないか?
君の背負った悲しみを僕にも分けてくれない ....
子育てで
教えてもらうことばかり
それで自分が成長していると
思っていたが
子どもが自分を理解する親に
育てていたのだ
子育てに成功も失敗もないと
言っていた
父の横顔を思い出す
戦士は荒れ果てた野にひとり立っていた
大振りの剣を脆弱な杖に窶しながら
脆弱でも杖がなければ歩くことは叶わず
勲章にもならぬ全身の傷に耐えることはままならず
敗戦の末に歩いた夜の闇は
....
箱の内側に油を塗って
取り出したマトリョーシカみたいな
重なる記憶がぶつからないように
思い出はいつも滑りやすいから
スケートリンクで放し飼いにする
転んだら痛みが伝わる身体
あの ....
手も足もでない
遠さを感じ
わたしは青空を見上げて
懐かしいイワシ雲を見つけた
ずーっと
見上げつづけているだけだと
わかっていたんだけど
見も知らずの人に
歌を褒められて ....
人間
生きている間は生身
時には本能に逆らえなくなって
欲望に従順になるさ
男と女
女と男
たとえ愛し合ってなくても
一つ屋根の下に暮らしてしまう事はあるだろうよ
一つ屋根の下 ....
ぼんやり砂浜を眺める
ゆっくり砂浜を歩く
夏の潮騒は賑やかで元気いい
身も心も夏に染まって
「今」だからこそ輝ける
眩しい陽射しを浴びて暑くても
潮騒を聞けば涼しくなる感じ
....
今、一度だけ
あなたにサヨナラを言う
そして深く眠りにつくの
あなたは淋しそうに
でも優しく笑って
わたしにサヨナラを返してくれた
どうせまた会えるのだから
お別れの時間は短くて ....
失くしたものは
清らかな意地
血まみれで
無様で
嘲笑われ
下を向き
見つめたい
想いの力が幸せと
かつて信じて
強くあれ
そう
言い聞かせ
ただひとり
泣いたりする ....
怒れば父に似ていると言われ
黙っていれば父の父に似ていると言われ
笑っていると母に似ていると言われる
母方の田舎には老人ばかりで
外を歩けば何処のもんやと
わらわらと集まってきて
ほお、ほ ....
929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969
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