白いブラウスの襟を
真っ直ぐに戻す時は
紙ひこうきみたいに
指先から離れて飛ぶ
空に少し傷跡を残す
翼が迷った代わりに
私の唇で閉じていく
思いも願いも込めて
音のない最終滑走 ....
子供が
空を飛んでいた
いや
飛んでいたというよりは
屋根から滑空していた
大きなカマキリに似た生き物を背中に乗せ
そこから記憶はなく、始まりは窓を開けていた
家庭用プリンタから ....
「無知は無罪じゃない、有罪なんだよ?」
と言ってわたしを責めたかつての友人に、
「自分が無知であることに無知だから
あなたも有罪ね」
と今の自分なら言える。
....
庭の木も街路樹もすっかり
葉が落ちさり手をひろげて
雪を待ちかねてざわざわと
さぁ、おいで、雪よ、おいで
歌いながら風を掬い夜を掬い
全身で冬の夜空を受け止めて
君は僕の手をひいて ....
俺はいつでも
時限式の爆弾をこめかみに隠している
作ったのは間違いなく俺自身だが
どれぐらいで爆発するのかは全く判らない
シリアスに活動している
シリアスに活動していると
時々そういう ....
これは瀆神に非ず 篤信の祈りなり。
さる罪深き女が
陶酔と法悦に見出した
祈りの散文である。
故にこの書に法則は無く 拘束も無く
また侮辱を受けるに値しない。
ダビデの子よ ....
溜め息で割れるほど壊れやすい
チョコレートの鏡は青春みたい
甘く溶けていく間に消えて
胃の中で重さを感じるから
戻ることのできない後悔を
虫歯が痛み出して始めるの
あの人の笑顔 ....
冷えた月。今年最後の満月が現れた二日後には数え切れないほどの星が流れたね。あれ、みんなふたごなんだってよ。手と手をとってキャラキャラ笑って。箸が転んでもおかしいってやつだ。お年頃なんだね。じゃあ落とし ....
*
貧しい子どもたちのモノクロの微笑み
冬の頼りない日差しに委ねる頬
悪意は悪意のままでだけ美しい
信じることと騙されることが同義となった今
焦点は暈されたまま
クシャクシャ ....
ゲツヨウは玄関を掃き
カヨウは火の元周辺を
スイヨウは水回り中心
モクヨウは床を磨いて
キンヨウは家計の管理
ドヨウニチヨウは予備
月火水木金土日のホシ
コクコクと過ぎゆく月
メク ....
怒りをこめて
空が鳴っている
人のせいかは分からない
ただ無性に空が怒っている
もうずっと晴れていない
空が晴れないと
この土地は敗北したように沈む
こんな姿は見たくないと
私は部屋に ....
ふと顔を上げ
車窓から外を覗くと
無数の屋根が並び
その暴力的な密度に
くるしい
と思わず呟いたあと、
顔なんて上げなければよかった
次の駅
降りて、溶ける身体を去り
改札を出る
幸福について考えるとき
幸福はいつも
私というものを
嫌と云うほど 突きつけてくるのです
幸福になりたい
ため息みたいに口について出てくる言葉
だけど 一体何がどうなれば
幸福と ....
結露は結露る気分でなくとも結露らずにはいられない質。
結論として結露が結露っているのは結露らざるを得ない為。
年末の日曜日
昼から呑みながら適当に
部屋の整理をしていたら
....
光に照らされ 透けて見える川底
流線型の魚影が うつくしい
フォーメーション
薄雲が川に陰りを与えると
失われた魚の影
代わりに現れたのは 鱗の煌めく魚たち
わたしは、だれとも 会 ....
まだ6時前だが
ぼくはカウンターのいちばん手前の椅子を引く
マスターが早かったね と言いながら
ぼくのアーリー・タイムスのボトルを出してくれ
磨かれたオン・ザ・ロック用のグラスがひとつカウ ....
唇を閉ざす桜の花びらが
あなたへ届けるハガキの
切手になるまで愛せるから
渇かないように
濡れないように
私を祈った季節を越えて
ジップロックの中で生きても
口づけに舞うほど強く ....
人ってさ
誰しも三つ持ってるよね。
一つは体
もう一つは心
そして最後に
かけがえのない
命ってやつ
何を今さら言ってんの
そんなの当たり前じゃないか
そんな事言わないで
....
恋人にもらった架空の靴で街を歩こうか。
(逐われる度に痛むんだ心臓が)
精神を病めば幽霊が見られなくなるんじゃないか?
(湿地で恋を叫びながら踊る人間たち)
かつての人は豹変する。
....
おばしまに乗る月は
妖精のスカート
葡萄色の瞳
月の吐息は朧にかかる
レンゲ畑は美しい雪の下
雪のミツバチはあなたの面影
月光を集めて飛んでいく
妖精のうしろ姿が見える
月 ....
香炉の炭が小さく赤く
藪小路の実のように
置かれた和菓子のように
上げた障子戸の向こうに
雪で染めた羽根が見える
茶室でふたりきり
白い息はひとつきり
他人の不幸に辿り着いたら
なぜだか幸せを噛み締めているようで
どす黒い絆という文字ばかり踊っているのです
空に近いところで
電線の数を増やすために
電柱に取り付けられた棒状のパーツが
電柱とクロスしていて
十字架のようになっている
電柱というのは宗教家である
世界中に張り巡らされ
イン ....
流氷の底につながってる
ぶらっくほおるの隅っこに
ちょこんと震えながら
持っていたのは
青一色の地図
そういやいつから
陸も山も
ひとも消えて
感情だけあふれるようになった ....
そのお嬢様は、人を信じることができなくて
そのお嬢様は、『いい人』のことが大嫌いだった。
いい人が、いいおこないをするのには
なにか理由があるんだと知っていたので
いい人を尊敬したりし ....
くさかれて
くさかれて
さきへさきへと
かわりゆく
れいわのさきへ
てをのばすとき
きづいても
つねにふたして
ねむるよる
のべのおも ....
煩い町に
ふれて
僕は 意味のまえにいた
夕がた
本をよんで
考えることを考えて
きみの眼を 思う
押しつぶした 光が
なんどもまる ....
話は長くなる
いくつか 電灯が浮きはじめる
夜 ためらいと苛立ちが覆っている
東京
思考のなかの
昇降するものをもたぬ
階段
道化師 指を剥い ....
躰のほとんどを
ねじれた袋におさめて
わたしたちは泣いていたね
はんぶん透けて
はんぶん凝ったような
美しさ 見えかけの 東京の月
758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798
【自由詩】自由詩の作品のみ受けつけます。自由詩批評は散文のカテゴリへ。
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