午前五時
買ったばかりのブーツでも足がかじかむ
約束にはまだ早いけど待ちたいからあのコを待つんだ
ふたりで今日どこまでもいこうって約束した
午前七時
バスが通勤のサラリーマンを詰め込んで ....
誰もいない街の上を
独りの鳥が飛んでいた
色褪せた黄金の街だった
かつて金色の泥流に埋もれて滅んだ
古代の街のようだった
乾いた巨大な植物のなかから
鳥は光の色 ....
角砂糖がコーヒーカップのなかで
とけていく
時計をみると
もう夕飯の時間だ
歩き続ける
迷い続ける
目に見えない糸が
ぼくをあやつっているよう
ぼ ....
生まれときから楽しいことをめいっぱい求めた
テレビゲームは非生産的な気がして仕方ないから
(いまテレビゲームへの疑念は
詩に向けられている)
八千円のアコースティック・ギターを質屋で買った ....
あなたが
雲雀の落し物を書き記しているとき
あなたが
コーヒーの甘さに悪態をついているとき
わたしは遠ざかる
遠ざかってゆく
あなたが
もつれた糸を我慢強く解きほぐすとき ....
周りの空気の苦々しさに
匿う様に顔を埋めた
(一時的な逃避だと謂われなくても解っているが)
それでも手首の甘い香りに
暫く我を取り戻す
(その甘さが香水からなのか血液に由来するのか分から ....
あなたは 土にならず
離れず 月に なった
継がないはずの 木々の名も
つなげぬからだ わたる鳥も
襖に 閉ざされた 小雪冷え
焚きつけたストーブ その奥
影に ....
絶望さえ透けていく
初夏の陽射しのもと
雲へ手をふり
永遠する未完の涙
生れ立ての傷が
{ルビ鎖状=さじょう}に結晶し
{ルビ手鞠唄=てまりうた}に弾む午後
幼き声の純粋にひそむ響き ....
陽が射してきて
枯れ木が透ける
焼き付いて
焼き付いて
焼き付いて
網膜がちぎれ
ふくらみ
あわただしく駆け込む
木陰の暗室で
白と黒
光のはためきを
視るわ
....
見たことのある大人の
さらりとしたもうお帰りなさいの言葉が
肌の羞恥で
ぽた、
と、密かに融けた夕方5時
ええ
子供はわざと赤
のち、黒でした、その速度を把握でき ....
(何ひとつ書くことはない)
あなたの存在そのものが
詩であり 世界であるからだ
鰐が天井にはりついて僕等を見下ろしている
それもまた
ひとつの世界だ
あなたは僕の父親と同じ歳で ....
仕事帰りにくたびれて
重い足どりで歩いていると
駅ビル内のケーキ屋に
女がひとり
微笑みを浮かべて立っていた
ガラスケース越しに
ふと{ルビ眺=なが}めるささやかな幸福
その{ ....
{ルビ穏=おだや}かな初春の陽射しを{ルビ額=ひたい}にあびて
目を細め のんびりと自転車をこいでいた
狭い歩道の向こうから
杖をついたお{ルビ爺=じい}さんがびっこをひいて
ゆっくり ゆ ....
貴方のことが好きだから
貴方と比べてしまいます
貴方はこうだった
ああだった
似ている
違う
私にとって
貴方が一番
でも
私が知っているのは
あの時の貴方
過去の貴 ....
何故降り積もったのか
僕らを組成する因子は
間違えることなく
ある日僕らを僕らにした
悲しみは毎日のように語られけれど
掌には幾ばくかの幸せが残されている
まだ誰も本当の悲しみ ....
歩道の残雪を
踏みしめる律動
声でもなく
音でもなく
歌でもなく
白い吐息に飽きて
見上げる
大気の天蓋
一弦の
その楽器
透明におびえ
....
胸と胸
肩と肩
重ねて
重なって
眠る街
ショーケースの隣
動かない
ふたりはオブジェ
なんだか
ちょうどいいですね
そうだね
タクシーの ....
飲み込んだ
ダイヤのピースは
光り輝いている
そう今も
ぼくはもう
こんなアンシャンレジースなんてうんざりだった
近くのエケレジアからは
悲しいエレジーが聞こ ....
一段と冷え込む夜こそは
君のその名に相応しい
張りつめた空気
静かに降り注ぐ光に
映し出される{ルビ現実=オモテ}
打ち放った声
遙か彼方に吸い込まれ
暗く広がる{ルビ現実=ウラ ....
「詩の授業をします」
情景や作者の心情を
貴方は淡々と語る
それは
授業方針に則って
淡々と
貴方は
詩を書いたことはありますか?
教科書に載っていた
「あなた」と「アナタ」 ....
午前三時の張りついた
テレビジョンが映すのは
夢に飢えた幻
街灯は常日頃
暖房とコップ一杯の水
憂鬱の揺れ
たったヒトイキの息
デジャヴのネオンは過激さを増し
ショッキングピンクが ....
降り続く雨が
肩を優しく包むから
あふれた涙が止らない
ひとしきり泣いたあと
涙のわけを考えたけれど
言葉にすることが出来なかった
それは
生まれたときから
始まっていたのかも ....
暗闇の中
まっしろな雪が
舞っている
遥か彼方の高みから
白い花が舞い落ちる
音も無く
無邪気に
降り積もる雪は
やがて
世界を
ひといろに塗り込める
憶 ....
学校には開けることのできない
扉がありました
旧校舎の階段の裏のあたり
七つの南京錠のかけられた扉でした
錠のひとつひとつに一匹の蜘蛛が巣をかけていて
人の手を遠ざけて 日曜日になると
し ....
色もかたちも失うほどにかがやき
原への道を埋めてゆく花
光にひらく午後
花に閉ざされる午後
檻のなかの木が
檻を呑みこみ
空を覆う
たったひとりの森になり ....
銀の魚
キララ
宙に浮かんだ
不思議なスプーン
美しく
(透明な水を満たしたガラスの箱)
銀の魚
キララ
張り詰めた神経は
とても敏感に
状況を捉え続ける
この広い世 ....
激しい荒波に揉まれて
はじめてたくましくなれる
甘く優しい環境では
自分の身もろくに守れない
ひ弱な生き物にしかなれない
厳しく辛い境遇の中で
生き残るために必死で知恵をしぼる
....
鉄橋を渡るときは
風が抜けていくから
とてもいい気持ちだ
見晴らしが良く
揺るぎ無い構造に
安心して身を任せ
渡り終えると
すぐに
油断のならない鉄路が続く
緩んだ犬クギ一本 ....
猿は社会を持っている
そこには自分より格上の者と格下の者がいる
人も社会を持っている
同じように自分より格上の者と格下の者がいる
あるいはそうだと思いこむ
人はみな平等であるべきだ
た ....
地下鉄脇にある箱の中で
友人とワインの
ハーフ・ボトルを
分けあって
薄暗い蛍光灯のせいで
だんだん言葉は
虫のようだ
かさかさと鳴く君の横で
僕はきりきりと答える
5410 5411 5412 5413 5414 5415 5416 5417 5418 5419 5420 5421 5422 5423 5424 5425 5426 5427 5428 5429 5430 5431 5432 5433 5434 5435 5436 5437 5438 5439 5440 5441 5442 5443 5444 5445 5446 5447 5448 5449 5450
【自由詩】自由詩の作品のみ受けつけます。自由詩批評は散文のカテゴリへ。
5.42sec.