夏のナイフ/佐々宝砂
た。
赤ん坊の泣き声じゃなくて、
小さな子どもの声だ。
ダンナはさらに不機嫌そうで、
私との間に新聞の壁をつくって、
テレビさえ見ようとしない。
イヤな雰囲気漂う家の中で、
ゴト、バタ、と、
家鳴りがした。
これじゃないンだ。
あれがほしいンだ。
ずっとほしかったンだ。
でもかってもらえなかった。
あれはもうすこしおおきくなってからだって。
また子どもの泣く声がした。
今度はさっきよりはっきりと聞こえた。
ダンナが新聞の壁を突然に崩した。
うるせーなーと不機嫌に言うかと思ったら、
違うみたい。
おまえ、あいつだろう、
マァち
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