夏のナイフ/佐々宝砂
ァちゃんだろう。
あれだな。あれがほしいんだな。
ほしがってたもんな。
はっきり言やいいのに、バカだな。
台所に向かってそう言うと、
立ち上がって、
納戸の戸棚をごそごそやりはじめてる。
何がなんだかわからない。
今度は私がイライラしてきた。
ダンナは小さなナイフを握りしめて、
居間に戻ってきて、
イライラしてる私を無視して、
ほら、やるよ。
ナイフを投げた。
すい、とナイフが消えた。
粉砂糖が水に溶けるみたいに。
すっかり消えてしまったと思ったら、
バラバラバラと私の包丁が落ちてきた。
よりによって、みんながみんな私の膝に。
ちょっと
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