なにものでもないもの あなた 息の果て/木立 悟
 




丸い生きもの
閉じかけた
小さく細いまなざし
右よりも左が大きい
風で傷んだ
艶の無い肉体
自分のための四肢を失い
うるおいだけがあふれんばかりの
何も感じず
何も見えない瞳を持った
少年の死体のような少女
あなたの生を知ろうとは思わない
知ったところで何ができよう
見る間に消えていこうとするその口を
とどめておくことすらできないのだから


死はまだ見えないが
生もまだ見えない
綿の無い布団に寝かされたあなたのからだは
わずかなひかりも
わずかな湿り気も受け入れようとしない
あまりにも長く暗闇のなかであなたと一緒にいたものだから
いつ
[次のページ]
  グループ"1986年の詩"
   Point(6)