近代詩再読 八木重吉/岡部淳太郎
 
のは、こうした「変な感じ」のおかげであると思われる。
 さて、夭折詩人にありがちなことであるが、八木重吉の詩もまた詩集『秋の瞳』『貧しき信徒』に収められたものだけでなく、それ以外の膨大な量の詩稿がある。詩人自らが傾向別にまとめたと思しきそれらの詩稿には、刊行詩集では味わえないような面白味がある。それは言ってみれば、短い詩をいくつも連ねた一種の連作詩のように見える。
 その中でも私が特に面白いと思うのは、「大正十三年六月十八日」の日付がある「鞠(まり)とぶりきの独楽(こま)」(原典では「ぶりき」に傍点)と題された詩群だ。


あかんぼが
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