近代詩再読 八木重吉/岡部淳太郎
 
い。または、感情の物語と言い換えてもいいが、いずれにしても、八木重吉は詩の中で無防備に自らをさらけ出しすぎているように見える。詩人の生と詩作を安易に結びつけるようなことはしたくないが、先ほどの「この変な感じは何だろうか」という感覚が、詩人の歩んだ人生(キリストへの信仰や、病気のために虚弱であらざるをえない身体など)がみなもとになっているような気がしてならない。この詩人には、一篇だけ取り出して読めばどうということのないただの感慨に過ぎないような詩が多くある。たとえば『貧しき信徒』に収められた次のような詩がそうだ。


日をまともに見てゐるだけで
うれしいと思つてゐると
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