近代詩再読 八木重吉/岡部淳太郎
ものと合わせて生前は未刊のままで終ってしまった詩群まで含めて検討しなければ、全体像は見えてこないのではないだろうか。ここに引いた「鞠(まり)とぶりきの独楽(こま)」からの五篇はその好例である。ここでは「鞠」と「独楽」という子供のためのおもちゃを題材にして、その題材をつきつめることによって他の単発の詩ではなかったような面白い味が出ている。最後に引いた「○(森へはいりこむと)」のように題材から離れた詩をところどころに挟みこむことによって、詩稿全体が外に向かって開かれているような感触もある。これらの詩でまず目を惹くのが、繊細で優しい響きを持った独特のオノマトペだろう。鞠をついている様子を「ぽくぽく」と表
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