青い預言者(マリーノ超特急)/角田寿星
かかる。それはヒトを養分にして徐々に溶けながら生長し土に還っていく。森に喰われるとはそういうことなのだ と。
嵐の晩。空を貫く電光が駆け巡った明くる朝にアスルは忽然と姿を消した。村人はアスルのかつての住処を突き破って一本の大木が生い繁っているのをみて息を呑んだ。一本と言っては語弊があるだろう。杉とも樫とも羊歯ともつかない植物が集合したような老木の風格をもつ生命体が一夜にして出現した。村を渡るつよい風を受けてそれは身を震わせ葉擦れの音にハーモニカの音色が聴こえたような気がして村人はその大木がアスルの失踪に関連づくものであろうと口々に噂した。
やがて一年も経たないうちに村人は知ることになる。そ
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