ノート(火と自乗)/木立 悟
目を閉じ
骨を確かめる
歯のかたち
牙のかたちを確かめる
地平線まで
指はのびる
ひらいた骨が
永さを失くした海を奏でる
あらゆる証書が
毛虫のようにうごめいている
なんの証しにもならないまま
脱皮しては飛び去ってゆく
牙に変わる 牙に変わる
こすれ ぶつかり
折れつづけなお
歯は牙に変わりつづける
蓋はずれ
蓋は回る
水の濁りを振り返らずに
元の器から離れつづける
虹に刺さるひとつの羽
縦は常に隔たりを描く
少しずつ少しずつ少しずつ割れ
少しずつ少しずつ微笑んでいる
骨だけの傘に飛沫はひら
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