ノート(朝と秘名)/木立 悟
布の下にだけある光
曲げようともせず曲がる音
夜が夜であるうちに
光が 光であるうちに
花の前の
羽と獣
煙は晴れる
組みかえる脚
雨はただ道に沿い
街は鈍にあふれ泡だち
音は無く
色だけが未明に騒がしく
紙の上の言葉
ちぎられた紙
燃される片方
燃えない言葉
白夜の影
流れ着く音
観測者の背
朝へ去る音
言葉のために
妻子を殺めた
鏡の裏の
街の語り部
川底を飛ぶもの
幸福を喰うもの
夜明けの橋から
水を見てはならない
標のように失われ
抱いてはこぼれ 消え去るもの
布の下の淡い肌
ひとつの星の通り路
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