ぼくは/アンテ
 
りと確認する
作り物の崖のうえから
小舟が滑り落ちるたび水しぶきがあがる
ボートをこいでいる人がいる
車をぶつけあっている小学生たち
売店
のまえでソフトクリームまみれになって
それでも笑っている女の子
ぼくはなんにも知らない
喉を空気の塊がこみ上げる
けっして声にはなれない言葉
どうせ気管切開が取れても
今さらふつうにはしゃべれないのだし
それに どうせ
二十四歳までの命なのだし

とつぜん足がすくんだ
前に歩けない
ほんのすぐ先に
派手なアトラクションがあって
行儀良くならんだ
たくさんの木馬が
たくさんの目が
ぼくではないなにかを見ている


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