ぼくは/アンテ
 

ぼくはなんにも知らない

空気を送り出すボタンを止めるだけで
死んでしまう程度の命なんだし
って諦めるふりをしていた自分がおかしい
ヒナコちゃんがいなければ
ぼくはとっくに
死んでいただろう
だから ヒナコちゃんが元気になるよう
ヒナコちゃんが喜ぶよう
元気を出して
そうやって
生きているふりをするのは
とても楽ちんだった
病院のすぐ近くに家を引っ越した両親
使い勝手のいい吸引器
おい そろそろ通院に切り替えていこうか
って先生が話を出すたび
決まって肉芽ができて息が苦しくなった
長いあいだ眠ることくらい
ちっとも怖くないって思っていたなんて
おめでた
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