横浜上麻生道路に立つと、二十年まえに走
り去った暴走族のすがたが甦る。あのころ犀
であった少年たちは、いまどうしているのだ
ろう。みんな十年かけて人間になったあと、
ジャンクフードを貪りながら労働にまみれて
いるのか。それとも犀であったころを懐しみ
ながら暗い部屋で眠っているのか。あのころ
犀をみかけることは稀だった。だが、いまは
どうだ。わずか二十年が経っただけなのに、
路上を往きかうのは犀ばかりだ。かたい角(つの)を
ふりかざしながら挨拶を交わしているではな
いか。かれらは、いつ自分が犀になったかも
気づかないままスーパーTOPにつめかけ、
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