批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
しい爆音で走りまわっている
あれは暴走族ではない――あれは
夜になって犀に変身した若者たちだ
(中略)
もう かれらをパトカーは追わない
夜中の一時に110番する住民もいない
みんな毛布をかぶり おし黙って
ただ嵐が通過するのを待っているのだ
これを見ると、犀は人間でない者、人間でありながら人間としての常識やルールを理解していない者ということになる。だが、これだけだとただ単に迷惑を顧みない若者で終ってしまっていて、それでは少し弱い。あともう一箇所犀が登場するのは詩集最後の「25」においてだが、せっかくなのでこの章は全行を引用してみよう。
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