批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
」と昔を思い出しているのだが、やがて掃除をしながら「ぼくの両腕は/いつのまにか硬ばりはじめ」ていて、「背を折りまげてホースを動かしていると/そのまま元にもどらな」くなる。そして、「鼻のうえに小さな突起物が生えて」「両肢は かたい皮膚で覆われ」、話者自身が犀になってしまう。新聞を見ると、「昨日の犀変身者は○人」という記事も出ている。人間が次々に犀に変身しているという事態が、ここでは起こっているということがわかる。
さらに犀の登場する場面を見ていくと、「10」にこの犀の謎を解くような詩行が出てくるので、これも引用してみよう。
深夜の横浜上麻生道路を
けたたましい
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