批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
 
さりげなく「餌をあたえていた男」と重ね合わせられているような書き方がなされている。そして「17」での「ひとりの骸骨」となってしまった釘男だが、彼が首からぶら下げている板には「××の王」と書かれているのだ。このような記述を見ていくと、釘男がイエス・キリストを模倣した存在のように思えてくる。そういえばキリストも磔刑の時に掌に釘で穴を開けられている。最初に話者の前に登場した時に「鴉の屍をぶらさげ/それを五寸釘で扉にうちつけた」とあるのも、釘男の出自を遠回しに言い表しているようで興味深い。だが、釘男はただ単純にキリストそのものの象徴となっているわけではないだろう。詩集の前半でまるで死神のように見えるふるま
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
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