ハマダラカ(百蟲譜35)/
佐々宝砂
こいつの針は
いかにも太すぎる。
刺したらバレバレだってのに
気づかれてないと思ってる。
すでにかなり痒いのだけど
私は片手にキンカン持って
知らないふりしてあげてみる。
腹の赤味がゆっくりと色濃くなる。
私の血ではちきれそうになって
たぶん生まれてはじめて
味わっているであろう満腹感。
それから私は
満ち足りた虫を叩きつぶす。
嫉妬にかられて。
(未完詩集『百蟲譜』より)
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