■批評祭参加作品■ Poor little Joan!または視点についての雑感/佐々宝砂
う。本書を読めばわかることだが、哀れなのは皺んだ老婆と化したブランチではない。哀れなのは、若くて綺麗で朗らかで有能なジョーンなのだ。だからジョーンの夫は、彼女にむかって"Poor little Joan!"と呼びかける。哀れなジョーン! かわいそうな、虚しいジョーン! 夫に再会したジョーンは、自省して得たものをすべて忘れて、再びおぼろげな虚しい幸福へとかえってゆく。
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詩の視点はいったいどこにあるのだろうか、という疑問が、もう何年も前から私の喉にひっかかっている。私自身の詩は(意識的にそうしているから)おおむね視点が固定されているが、視点が揺れ動いたり視点が不
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