■批評祭参加作品■ Poor little Joan!または視点についての雑感/佐々宝砂
くなるまで手紙を書き、読む本もなくなり、ただ考えることしかやることがなくなり、ひたすら自分の来し方を見つめ直す。そのきっかけになったのは、再会した古い友人ブランチの言葉だ。ブランチはジョーンと同い年のはずだが、生活にやつれ皺んだ老婆のように荒み果てて哀れだ(と、ジョーンは感じる)。ブランチは歯に衣着せずものを喋る。その言葉は、ジョーンにとって謎としか思えない。足止めをくらって暇でしかたないジョーンは、ブランチの言葉について考える。考えに考える。徹底的に、もしかして私の人生はあらゆる点で間違っていたのではないだろうか、赦しを乞わねばならないのではないだろうか、と思い至るまで。
書いてしまおう。
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